「それに、二時間も三時間も待たされた挙げ句、診察時間は五分程度、それから会計までも時間が掛かる。それを改善するためにこの地域に病院を建てることにしたんだよ。そこで、君達にその病院で働いて欲しいんだけど……」
その裕二の言葉に、和也と望は目を合わせる。
「そのために望には全ての科を覚えて欲しいのだけどね?」
「全ての科っていうのは? 外科以外に内科とか整形外科とかか?」
望は話が変わると、いつものように話し始める裕二。
「そういうことだ。望が診断や判断をして、その自分の病院では何も治療ができないと思った時に春坂病院にその患者さんを送ってもらえればいい……君ならできるだろ?」
「多分……」
「多分じゃ困るんだけど。とりあえず、五年後の話でもあるんだけどね。それまでに君には全ての科を覚えてもらう。そして、私はその病院を君達に託すからね……嫌なら、歩夢に任せるのだけど? それと、裕実君もその病院に連れて行きたいのなら、もう一人その病院で医者を働かせたいのだが、それは君達で決めてもらってもいいからね。新城先生を連れて行きたいのなら新城先生でもいいし、他の先生でもいい。そこは君達の自由だから。この五年で望は色々と学び、新しい病院の方も考えて欲しいんだけど……」
そこまで裕二は言うと、意味有り気に望のことを見つめる。
だが、その時の望には裕二のアイコンタクトの意味が分からなかったようだ。
「とりあえず、これからは遅刻せずに頑張って行ってくれってことだよ。流石に遅刻はもうダメだからね」
「分かりました」
そう望は裕二に伝えると、和也と一緒に院長室を出て行く。
「なぁ、望……。最後にさぁ、院長が意味有り気に笑顔になった理由分かるか?」
「俺にそんなこと分かるわけねぇだろ?」
「だよなぁ。それと、やたら『五年』を強調して言ってたけど、なんか意味あんのかなぁって思ったんだけどよ」
「病院を建てる年数とかじゃねぇの?」
「普通、そんなに掛かるかぁ?」
「まぁ、確かにそうなんだけどな……」
「後はもう一人、医者を入れてくれとも言ってたしー、それは自分達で決めていいからって……」
「それは、大事なとこだろうなぁ。俺達はその新しくできる病院を任せられたんだぜ。やっぱ、できる医者じゃねぇと回らねぇってことだろ?」
「んー、それなら、新城しかいねぇんじゃねぇの?」
「だよなぁ。和也は新城が入ってもいいのか?」