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ー天使ー42

「ってさ……だけど、俺は辞めとけって言ったんだよな。アイツ、俺と働きたいってだけで医者か看護師で迷ってたし、そんな動機だけなら止めてくれって言ったんだ。俺たちの仕事は患者さんの命を守る仕事なんだから、そんな動機だけで働いてもらっても困るってな」

「まぁ、確かにそうだけどさ、今の状況なら、雄介にやってもらった方がいいんじゃねぇか? 望と俺と裕実……いい関係の中に他の奴を入れたくねぇんじゃね?」

「まぁ、そうなんだけどさ」


 望は意味深にそう言うと、ある場所で足を止めた。


「なぁ、和也……ちょっと、そこで待っててくれねぇ? あ、別に先に自分の家に帰っててもいいけどさ」

「……へ? あ、ああ」


 和也は望にそう言われて辺りを見回すと、そこは外科病棟のフロアであった。


「望! もしかして、雄介のお姉さんのとこに行って来るのか?」

「ああ、まぁな。確かに雄介のお姉さんだからって特別扱いはしたくはねぇけどさ、琉斗のお母さんでもあるからな……やっぱり、気になってさ」

「望が言ってる意味が分かるような気がするわぁ。じゃあ、俺も行く!」

「そっか……じゃあ、行こうぜ」


 二人はそう決めると、雄介のお姉さんの病室へと向かう。


「でもさぁ、何で雄介のお姉さんのとこに行くんだ? まさか、お前……望と雄介の関係を話すって訳じゃねぇよな?」

「まさか……そんなことは言わねぇよ。世間的に考えて、そんなこと言える訳ねぇだろ。そのことは流石に言えねぇよ。そんなことを言って、精神的ダメージを受けたらどうすんだよ……今後に響くだろ?」

「んー、ならさぁ、行かねぇ方がいいんじゃねぇか? 余計なことを話さない為にさ」

「そっか……確かにそうだよな。雄介のお姉さんのとこには回診とかの時だけの方がいいか」

「そういうことだよ。とりあえず、今日は帰ろうぜ」

「ああ、そうだな」


 二人は今日、雄介のお姉さんの所に行くのは諦め、駐車場へと向かった。


 その途中、和也は歩みを止め、望に声を掛ける。

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