「なぁ、今日はさぁ、せっかくの休みなんだろ? 琉斗は俺に任せて、二人でデートに行って来いよ。別にデートしなくてもさ……二人で居られる時間があまり無いんだからさ。だから、今日は二人でゆっくりしろよ。俺たちはいつでも二人きりになれるからさ」
「あ、え? 別にいいよ」
久しぶりの二人だけということに、望は照れくさくなったのであろう。いつもに増して声を籠もらせてしまっていた。
そんな望の背中を軽く叩くと、
「気にすんなって! 俺たちの仲だろ? 困った時はお互い様だしな。まぁ、親友なんだから、頼れる時には頼れよな」
「まったく、分かったよ。今日は雄介と二人きりにならせてもらうよ」
望は和也に笑顔を向けると、
「じゃあ、また明日な!」
「ああ、なんなら今日は望から雄介のこと誘っちまえよ!」
そう、駐車場での別れ際に和也はふざけて言った。
その和也の言葉に望は転けそうになり、何とか立て直すと、
「バ、バカヤロー! お、俺がそんなことできる訳ねぇだろうがぁ!」
「今の望ならできるんじゃねぇの?」
「まったく……その意味あり気な言葉はなんだよー」
「んー、そのまんまー」
「と、とりあえず! 琉斗のことは和也に任せたからな」
「そう誤魔化してるようだけど、俺に琉斗を任せたってことは……ま、そういうことなんだろうな」
和也はニヤけながら言うと、望は言い返すつもりで、
「お前だって、欲求不満なんじゃねぇのかぁ? そんなことを言うってことはさぁ」
「ああ! 欲求不満だよー。だから、今日の夜には裕実を久しぶりに抱くつもりだしー」
和也は何の抵抗もなく、それこそオープンに口を開く。
望は和也に仕掛けたつもりだったのだが、逆にオープン過ぎて言い返せないというところだろうか。
「んじゃあなぁ、俺は帰るからよ」
「おう! またな!」
これ以上話をしていたらなかなか二人が離れる様子がないと分かったのか、望は和也に手を上げると自分の車へと向かった。
和也の一言で、今日は久しぶりに雄介と二人きりになれると思った車の中で、望の顔は緩みっぱなしであった。
そして望は自分の家の駐車場へと車を停めると、家の中へと入って行った。しかし、流石に雄介の姿は玄関にはない。
むしろ、一階には雄介の気配すらない状態だ。
「いる訳ねぇよなぁ。流石に雄介は寝てるか」
望は独り言を漏らすと、どうするか迷っていた。