雄介の傍に向かうか、このまま一階で大人しく雄介が起きて来るのを待つか――。望は迷っていた。
ふと時計を見上げると、時刻はお昼を回っている。そんなことを考えているうちに、時間はどんどん過ぎていく。
今日は和也がせっかく二人だけの時間をくれたのだ。時間を無駄にする訳にはいかない。
望はゆっくりと二階にある自分たちの部屋へ向かった。
久しぶりに雄介と二人きりになることに、望の胸はいつも以上に高鳴っていた。雄介と会った当初のような、あのときめきが再び胸の中を駆け巡っている。
自分の部屋なのにもかかわらず、望はドアを開けるのに躊躇していた。
そのとき――。
きっと雄介が琉斗を迎えに行くために目覚まし時計をセットしていたのだろう。アラームの音が部屋中に響き渡った。その音に驚いた望は体をビクリと震わせる。
次の瞬間、望がふと顔を上げると、目の前には雄介の姿があった。
「望……こんなとこで何してるん? 仕事やなかったんか?」
雄介の言葉に、望はまだ体を硬直させたままだ。
「望……? 大丈夫か?」
そう言って雄介が望の顔を覗き込む。その瞬間、望はハッとして体を動かすことができたものの、驚きのあまり後ろの壁に寄りかかるような格好になってしまった。
「そないに驚かなくてもええやろ? 望……俺やって……」
「あ、おう……そうだったな」
ようやく声を出し、目の前にいる雄介の顔を見上げる。
さっきまで驚いていた望だったが、目の前にいるのが雄介だと気づくと、体の力がふっと抜け、愛おしそうな表情で彼を見つめた。
「どうしたん? そんな目で俺んこと見つめて……」
その優しい声に誘われるように、望は無意識のうちに体を動かしていたのかもしれない。気づけば、両腕をいっぱいに広げ、雄介の大きな体を抱きしめていた。
雄介からはどこか懐かしい香りが漂ってくる。その匂いに、望の中で安心感が広がっていった。
「雄介……」
「ん?」