「そっか……そんなに深く考えなくても答えは簡単なことだったって訳か」
「……で、雄介とお前の間で何があったんだ?」
「ちょっと、待て……。それを話すのは後にしてくれねぇか? やっぱ、琉斗の前でその話、出来る訳ねぇからな」
「まぁ、確かにそうだけどな」
望が和也の部屋に入ると、琉斗は望の姿を見つけ、嬉しそうに望の足に抱きついた。
「望兄ちゃん! ママの様子はどうなの?」
「ママの様子?」
いきなり琉斗にそんなことを聞かれた望は、困ったように頬を掻いた。
今日、望は確かに病院に行ったが、琉斗のお母さんには会っていない。だから琉斗のお母さんの様子を尋ねられても、すぐに答えることができなかった。
「あ、ゴメンな……琉斗。今日は俺は休みで、琉斗のお母さんには会ってないんだよ」
結局、琉斗に正直に伝えるしかなかった。
「そうなんだ。でも、大丈夫なんだよね?」
「ああ、俺がいない時は他の先生が琉斗のお母さんのことを診てくれているからな。大丈夫だよ。もし、琉斗のお母さんに何かあった時には、俺の携帯に病院から電話が掛かって来るだろうしな。だから、今は大丈夫。今度、雄介おじちゃんが休みの日にでもお見舞いに来たらいいと思うよ」
「うん! 分かった! そうするね!」
望は自分でそう言いながら、周りを見回して眉間に皺を寄せた。その様子に気付いた和也は、ますます確信を深めたようだった。雄介と望の間に本当に何かがあったと確信したのだ。
その後、和也は夕食を作り、琉斗が寝静まった頃には裕実も和也の家に来て、望と話を始めた。
「……で、望……さっきの話はどういうことなんだよ。雄介と喧嘩したんだろ?」
「ま、確かに……和也の言う通りなんだけどさ、何処から話をしたらいいんだろ?」
望は、今の状況では和也たちから逃げられないと悟ったのだろう。望にしては珍しく、話を始めようとしている。
「最初っから話せよ……じゃねぇと、こっちが話見えて来ないからさぁ」
「分かったよ……今日、あったことを全部話すな」