望は、雄介と喧嘩したことを和也に話し始めた。
話を聞き終えた和也が口を開く。
「望が焦り過ぎなんじゃね? それに、雄介だって、やりたくねぇのにやったって成長は出来ないだろ?」
「やっぱり、そういうことなのかな?」
「それに、半分無理矢理に望が雄介に医者か看護師になるように言ったんだろ?」
「それは前に話しただろうがぁ。雄介は前に一瞬だけ看護師か医者になりたいって言ってたから、その話を雄介に振っただけなんだからよ」
「でも、望は雄介に医者の方になってほしい、みたいなことを言ったんだろ? まず、雄介に医者が勤まると思うか?」
「だから、それは何回も雄介に確認したよ。それでも本人は構わないって言ってたし」
その望の言葉に、和也は首を捻りながら考え込んだ。
「なぁ、今から雄介呼ばないか? それで俺が色々と雄介に聞いてみるよ。望と雄介だけだと、望が冷静じゃないみたいだからさ。そしたら、二人からの意見を聞けるだろ?」
「あ、だけど……」
「今は雄介と会いたくない……か? だけど、それじゃ、お前達の関係も近付けることが出来ないし、話も進まないと思うけどな?」
それまで話を聞いているだけだった裕実が、急に割り込んできた。
「望さん! 今しかないと思うんですよ! 雄介さんと話す時間っていうのはね。僕たちがいますから大丈夫ですよ」
裕実は望に向かって笑顔を向ける。望はそれを見て溜め息を漏らした。
「やっぱ、俺も裕実には弱いかもしれねぇな」
望はそうボソリと呟くと、
「分かった! 雄介を呼ぶことにするよ」
そう言って立ち上がり、携帯を手に玄関先へと向かう。望の性格上、電話の内容を聞かれたくないのだろう。
その間、和也と裕実は目を合わせ、アイコンタクトを交わしていた。
和也は裕実に向かい、『流石だな……望の性格を分かっている。望の場合、俺から言うより裕実が言ってくれた方が聞くんだよな』という表情を見せ、裕実は『良かった』と応じた。
その時、玄関のチャイムが部屋中に響き渡った。
こんな時間に来る人物とは誰なのだろうか。宅配物などかもしれない。しかし、まさか雄介が来るわけがない。望は今、雄介と電話をしている最中なのだから。