和也は警戒しながら玄関先へと向かう。
その途中、望と目を合わせたのだが、望はやっぱり携帯を持っていた。
和也は覗き窓から外の様子を伺うと、どうやら和也の位置からは洋服しか見えていないようだ。
そして、その人物が誰だか分からず、更に様子を聞くために耳をドアへと当ててみる。
すると荒い息づかいが聞こえてきた。和也の中でますます警戒心が増したのか、和也の方は逆に息を潜めてしまう。
和也のストーカーなのであろうか。
その時、再びドアを叩く音が響き、その後、声が聞こえてくる。
「和也……居てんねんやろ? もしそこに望が居てんやったら、会わせてくれへんか?」
そう外からはいつも聞き慣れている声が聞こえ、今まで警戒していた和也だったのだが、その声にゆっくりとドアを開けた。
「なんだよ……お前だったのかよ」
「そりゃ、無いやろ?」
「名乗らないお前が悪い。それに、覗き窓から顔が見える位置にいろよ。顔見えなくって警戒したじゃねぇかぁ。あのな、それに、息づかいも荒くて、一瞬ストーカーかと思ったぜ。ま、とりあえず、入れよ……お前にも話があるからさ」
和也は雄介を部屋の中へと通すと、奥の部屋へと向かった。
和也の部屋はかなり狭い。一部屋しかなく、しかも半分はダブルベッドで取られているのだから、大人四人ではかなり窮屈な空間である。
「つーか、望! 雄介に電話してくるとか言いながら、してなかったんだろ?」
「あ、まぁ……ちょっとな……やっぱり、なかなか電話出来なくてよ」
「だから、俺が今玄関開けるのに躊躇したんじゃねぇか。ま、いいや……とりあえず、雄介! ここに来たってことは俺達に話すことがあるんだろ?」
「あ、まぁ……和也とかに話すとかやなくて、望を迎えに来たって言った方が正解なのかもしれへんな」
「じゃあ、望のことを迎えに来た。ってことはちゃんと話の答えを持って来たってことだよな?」
「まぁ、とりあえずはな」
「なら、雄介的にはどうなんだよ。とりあえず、望と雄介だけでは話すことが出来ないってな訳で、俺が聞いてやる」