そんな会話をしていると、部屋内にチャイムが鳴り響く。
いったい日曜日のこんな朝早くから、誰なんであろうか。
「雄介、出て来てくれよ」
「まぁ、ああ、ええねんけどな」
雄介は琉斗の手を引くと、リビングにあるインターフォンの受話器を取る。
『スイマセン! 歩夢ですけど……』
今来た人物の名前に聞き覚えがある雄介は目を丸くし、雄介は望の方に顔を向ける。
「望! 歩夢が来たみたいなんやけど?」
「歩夢!?」
その名前に望は目を丸くし、席を立ち上がる。
何でこんな時に歩夢は望達の家に来たのであろうか。
そんなことを思いながらも、望は雄介からインターフォンの受話器を貰い、電話に出るのだ。
「なんだよ歩夢……」
『ただたんに雄兄さんに会いに来ただけだよ』
忘れていた頃に来るとはこういうことなんであろうか。
望は溜め息を吐くと、
「雄介に会いに来たんなら、開けてやらねぇに決まってだろ」
『ふーん……兄さんはそんなに雄兄さんにぞっこんなんだね。でもさ、僕も雄兄さんのことが好きなんだけどなぁ。ほら、学生の僕はこういう時にしか来れないじゃない? だから、わざわざ来たのに開けてくれないのぉ? なら、騒いでもいいよ……そしたら、近所迷惑になるんじゃない? それに、雄兄さんに会わせてもらうまで、今日は僕、ここに居るつもりだしね。その間、ここで騒ぐよ』
脅しとも言える歩夢の言葉に、望は溜め息を漏らす。
確かに外で歩夢が騒げば迷惑になるには間違いない。そして歩夢は未成年で、望達はとっくに二十歳を超えている大人である。
こういう場合、歩夢には否はなくなるという事だ。
どこまで歩夢が非道な手を使ってでも雄介に会いたいのか、よく分かる。
望は溜め息を吐き、インターフォンの受話器を置くと玄関へと向かうのだ。
そして望は歩夢のことを部屋に入れるしかなくなってしまったようにも思える。
歩夢は望の家に入ると廊下を走り、雄介の元に向かい、雄介を見つけると背中を抱き締める。
「雄兄さん! 久しぶり! やっと、雄兄さんに会うことが出来たよねぇ!」