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ー天使ー69

「ちょ、ちょー! 急に歩夢何すんねん! 俺等、飯中やぞー! それに、今は琉斗を膝の上に乗せておるんやから危ないやろが」

「……琉斗?」


 歩夢はその名前に聞き覚えがなく、目をパチクリとさせながら雄介のことを見上げる。


 どうやら歩夢の位置からは琉斗の姿が見えていなかったらしい。


 歩夢は雄介にそう言われ、雄介の膝の上を覗き込むと、雄介の膝の上にちょこんと座る琉斗の姿があった。


 二人の視線が合わさると、どちらの表情も『誰?』という感じで見つめる。


「ぇえー!! まさか、兄さんと雄兄さんの子供ー!?」

「……な、訳ねぇだろうがぁ」


 その驚いたような歩夢の質問に、間髪を入れずに望は答える。


「どう考えたって、俺達の間に子供が産まれる訳がないだろー?」

「当たり前じゃん。そうじゃなくて……養子でももらったのかなぁ? って思ってね」

「それもない! お前だって、俺達が忙しい仕事してんの知ってるだろ? そんな状況で養子なんかもらえる訳がないだろがぁ」

「じゃあ、拾って来たとか?」

「お前はアホなのか、頭いいのか分からない奴だな。その子は雄介の甥っ子。その子の両親は離婚していて、今、母親は俺が働いている病院に病気で入院してんだよ。だから、預かってるだけだ」

「なーんだ……そういうことだったのかぁ。なら、まだ僕にも雄兄さんを狙う余地はあるよね?」


 その質問に望は再び溜め息を吐く。


「そういうことなら、やっぱりお前を部屋の中に上げなきゃ良かったぜ」

「家に入れてくれなかったら、騒ぐからいいもん」


 歩夢は琉斗の視線に合わせると、


「こんにちは……僕は望兄さんの弟で歩夢っていうんだ。よろしくね」


 と歩夢は琉斗に向かい笑顔を見せた筈だったのだが、琉斗はジッと歩夢のことを見上げ、


「雄介おじさんは僕のもんだからね! 望兄ちゃんも裕実兄ちゃんも和也兄ちゃんもだから!」


 子供なりに歩夢の何かを感じたのかもしれない。 雄介の両腕を掴み、歩夢のことを睨み上げる。


「ねぇ、琉斗君……今日だけ雄兄さんを貸してくれないかなぁ?」

「やーだ! 歩夢兄ちゃんに雄介おじさんは貸してあげないからね!」

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