「ちょ、ちょー! 急に歩夢何すんねん! 俺等、飯中やぞー! それに、今は琉斗を膝の上に乗せておるんやから危ないやろが」
「……琉斗?」
歩夢はその名前に聞き覚えがなく、目をパチクリとさせながら雄介のことを見上げる。
どうやら歩夢の位置からは琉斗の姿が見えていなかったらしい。
歩夢は雄介にそう言われ、雄介の膝の上を覗き込むと、雄介の膝の上にちょこんと座る琉斗の姿があった。
二人の視線が合わさると、どちらの表情も『誰?』という感じで見つめる。
「ぇえー!! まさか、兄さんと雄兄さんの子供ー!?」
「……な、訳ねぇだろうがぁ」
その驚いたような歩夢の質問に、間髪を入れずに望は答える。
「どう考えたって、俺達の間に子供が産まれる訳がないだろー?」
「当たり前じゃん。そうじゃなくて……養子でももらったのかなぁ? って思ってね」
「それもない! お前だって、俺達が忙しい仕事してんの知ってるだろ? そんな状況で養子なんかもらえる訳がないだろがぁ」
「じゃあ、拾って来たとか?」
「お前はアホなのか、頭いいのか分からない奴だな。その子は雄介の甥っ子。その子の両親は離婚していて、今、母親は俺が働いている病院に病気で入院してんだよ。だから、預かってるだけだ」
「なーんだ……そういうことだったのかぁ。なら、まだ僕にも雄兄さんを狙う余地はあるよね?」
その質問に望は再び溜め息を吐く。
「そういうことなら、やっぱりお前を部屋の中に上げなきゃ良かったぜ」
「家に入れてくれなかったら、騒ぐからいいもん」
歩夢は琉斗の視線に合わせると、
「こんにちは……僕は望兄さんの弟で歩夢っていうんだ。よろしくね」
と歩夢は琉斗に向かい笑顔を見せた筈だったのだが、琉斗はジッと歩夢のことを見上げ、
「雄介おじさんは僕のもんだからね! 望兄ちゃんも裕実兄ちゃんも和也兄ちゃんもだから!」
子供なりに歩夢の何かを感じたのかもしれない。 雄介の両腕を掴み、歩夢のことを睨み上げる。
「ねぇ、琉斗君……今日だけ雄兄さんを貸してくれないかなぁ?」
「やーだ! 歩夢兄ちゃんに雄介おじさんは貸してあげないからね!」