どうやら歩夢にとって、望や和也以上に手ごわい相手が出てきたようだ。
流石の歩夢も琉斗には、大人気ない行動はできないであろう。
「どうしてもダメ?」
「ダメ! 歩夢兄ちゃんは本当に雄介おじさん取っちゃいそうなんだもん!」
そんな琉斗の言葉に、望や和也は肩を震わせて笑っていた。
「歩夢……お前さぁ、雄介に手出すの諦めた方がいいんじゃね? 流石のお前も琉斗には勝てねぇだろうしなぁ」
「そんな訳ないじゃん! 僕はどうしても雄兄さんと一緒になりたいんだからね!」
どうやら歩夢は、今の和也の台詞で余計に煽られてしまったらしく、本気を出してしまうようだ。
そんな歩夢の姿を見て、望は和也の耳元で囁く。
「お前なぁ、歩夢を煽ってどうするんだよ。アイツ、そんなこと言ったら、意地になるだけだぞ?」
「分かってるよ。でも、明らかに琉斗の方が優勢だろ? だから、歩夢の奴、どうするのかなぁ? って思ってよ」
「まったく、和也の思惑通りってやつだったのかぁ」
「まぁな」
望達は食事を終え、歩夢と琉斗のやりとりをソファで見守っていた。
「な、お願いだから、今日だけ雄兄さんを貸して……」
「さっきも言ったでしょー、歩夢兄ちゃんには絶対に雄介おじさんは貸さない! 望兄ちゃんや和也兄ちゃんになら雄介おじさんを貸してもいいけど……歩夢兄ちゃんは絶対に嫌だからね!」
琉斗は頬を膨らませ、歩夢の顔を見上げている。
「んじゃ、雄兄さんを望兄さんに渡してよ」
「ダメ! 歩夢兄ちゃんが居る時には、望兄ちゃんにも雄介おじさんは渡さないんだから! だって、雄介おじさんを望兄ちゃんに渡したら、歩夢兄ちゃんが雄介おじさんを取るの分かるもん! だから、ダメ! 雄介おじさんは僕が守るの!」
このままでは話が平行線だ。
歩夢は溜め息を吐き、強行手段に出ようとする。
雄介の上に座っている琉斗を抱き上げ、退けようとしたのだが、流石の雄介もその歩夢の行動に立ち上がり、
「ちょ、歩夢……流石にそれはアカンやろ? 子供相手に力ずくってのはなぁ。お前がそんな手に出るんやったら、俺は琉斗の味方になるからな」
そう言いながら歩夢の手を押さえ込む雄介。