その雄介の気迫に、流石の歩夢も諦めがついたのか、一つ溜め息を吐くと、
「分かったよ。今日はここまでにしておくけど、今度僕がここに来た時には、雄兄さんのことを狙わせてもらうからね」
歩夢の言葉に、和也達が呆れたように溜め息を吐いたのも言うまでもない。実際、本気で歩夢が雄介のことを諦めた訳ではないのだから。
歩夢はそれだけを口にすると、今日は潔く諦めたように望の家を出ていった。
全員が安堵の溜め息を吐いた頃、琉斗が雄介を見上げて言う。
「ボク、歩夢兄ちゃんのこと大嫌い! ねぇ、雄介おじちゃん、歩夢兄ちゃんって誰なの?」
子供ながらに琉斗はそれが気になっていたらしく、『嫌い!』と言いながらも目をパチクリとさせている。
「え? 歩夢は誰かって? 望兄ちゃんの弟やで……」
「……弟?」
まだ子供の琉斗にはその言葉の意味が分からなかったのか、首を傾げながら雄介を見上げた。
「あー、知らんかった言葉やったんか。まぁ、琉斗には兄弟おらんし、知らんくても無理ないな。 弟っちゅうのはな、例えば琉斗の下にもう一人男の子がおったら、その子が弟やねん。 それと同じでな、琉斗のお母さんには弟がおるやろ? その弟が俺なんやで」
「ふーん……そうなんだ……分かった!」
本当に琉斗が理解したのかは定かではないが、二人の会話が途切れると、今度は和也が口を開いた。
「いやぁ、歩夢の奴……今回ばかりは琉斗には勝てなかったみたいだな。流石に手を出そうとした時は焦ったけどよ。まぁ、そこは雄介がなんとかしてくれたしな。で、雄介ってさ、歩夢に全然気はないの?」
「当たり前やんか。しかし、今回の歩夢にはホンマ焦ったわぁ。まさか琉斗にまで手ぇ出してくるとは思わんかったしな」
「だよな。流石に普通そこまではしねぇだろ?」
「まぁ、歩夢はまだまだ子供ってことやな」
和也はそう言いながら望に顔を向けると、
「なぁ望、話変わるけどさ。もし今回、雄介が歩夢に手ぇ出してたら、歩夢を庇ったか?」
「まさか……俺が歩夢を庇う訳ねぇだろ。歩夢は兄弟だけど、あんまり縁がない感じだしさ。それに、今のはどう見ても歩夢が悪いだろ?」
「まぁ、確かにそうだな」
和也はそう言うと、立ち上がった。