そんな雄介の言葉に口を挟んだのは和也だった。
「望は雄介が寝ていないことが心配なんだろ? ……で、雄介がちょっとでも寝れば行けるって言うんならさ、車で寝たらいいんじゃね? 遊園地まで一時間はかかるだろうし、今日は日曜日だから道が混むかもしれないしよー。一時間以上寝れるかもしれねぇぞ」
和也の提案に望は腕を組んだままじっと考え込むが、すぐに顔を上げ、雄介を鋭い視線で見据えた。
「分かった。遊園地に行くのはいいんだけどさ。雄介、忘れてないよな? 今日はお前をテストするって言ったことをさ。まさか、それから逃れるために遊園地に行こうなんて言ったんじゃねぇだろうな?」
「そ、そんなこと思ってへんわ! いや、テストのこと……素で忘れてただけや……」
雄介は頭を掻きながら乾いた笑いを浮かべる。どうやら本当に忘れていたらしい。その様子に望は呆れたようにため息を漏らした。
「ま、いいや。とりあえず遊園地には行くんだろ? なら準備してこないとな」
そう言った和也が笑顔を見せると、今度は望が雄介に向き直る。
「とりあえず、テストは帰ってきてからでいい。今からやってたら遊園地に行くのが遅くなっちまうしな」
「せやな」
雄介は納得したように頷き、琉斗を抱き上げると床に立たせて言った。
「琉斗、遊園地に行くことになったから準備してきぃや」
「うん!」
琉斗は元気よく返事をすると、着替えるために勢いよく階段を駆け上がっていく。
「良かったですね。遊園地に行けるようになって。琉斗君、すごく嬉しそうでしたよ」
裕実の言葉に和也は笑顔で頷くと、今度は望に向き直る。
「……で、マジでお前、遊園地に行ったことがないのか?」
「ねぇよ」
望が素っ気なく答えると、和也は少し驚いたような顔をしたあと、にっこりと笑った。
「そうなんだ。なら今日は思いっきり遊園地で楽しめよ!」
「あのな……俺は子供じゃねぇんだから別に楽しもうなんて思ってねぇよ」
望は呆れたように肩をすくめるが、和也は全く気にした様子もなく言い返す。
「いいから、いいから! 楽しんだもん勝ちだぜ。ま、俺は楽しむけどな!」
「楽しむのは勝手だが、明日に差し支えるようなことはするなよ」
「分かってるって!」
軽口を交わしながらも、それぞれが準備のために動き出した。