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ー天使ー76

「ああ! 俺も琉斗のこと好きだからな。今日は遊園地でみんなで楽しもうな!」

「うん! 前まで雄介おじさんにいっぱい連れて行ってもらえたんだけど、最近、一緒に行ってなかったから、すごく楽しみなんだ!」

「そっか……」


 そう和也は答えながらも、最近、雄介が琉斗を遊園地に連れて行けない理由を分かっていた。


 多分そのことを琉斗に話せば、琉斗はきっと望のことを嫌いになってしまうかもしれない。そう判断した和也は、それを胸の中にしまったまま話さないでおくことにした。


「でもさ、琉斗。雄介おじさんは本当は忙しいんだから、あんまり無理なことを言うんじゃないぞ……」

「うん!」


 そう和也が言った直後、なぜか望が琉斗をフォローする。


「あのさ、和也。あんま、琉斗に無理なこと言うなよな。なんか、今さらながらに琉斗の気持ちが分かってきたような気がすんだよなぁ」


 望は琉斗のフォローに入ったのはいいのだが、だんだんと自分の言葉が恥ずかしくなったのか、顔を窓の外に向けたまま続けた。


「だからさ……俺も、このぐらいの時期にはもう親がいなかったから、婆ちゃんには心配させたくねぇとか思っちまって。何もかも我慢してきちまったんだよ。琉斗は今、親がいなくて、雄介と一緒にいるだろ? でも、雄介は自分の親じゃないから、心配させたり、わがままとか言ったらいけないと思ってるんだと思う。だからさぁ、わがままなこと言わせていいと思うんだよな。わがままとか言わせてやらねぇと、多分、俺みたいな性格になっちまうだろうしな」


 望の長々とした言葉に、和也はクスリと笑うと軽くうなずいた。


「確かに、望の言う通りなのかもな。俺たちがフォローしてやらないと、琉斗がかわいそうだもんな。そうだ! 今は俺たちが琉斗の保護者みたいなもんなんだからな!」


 和也は琉斗に声を掛ける。


「琉斗、確かに今は琉斗のお父さんとお母さんはいないけど……俺たちのこと本当のお父さんみたいにしていいんだからな」

「うん?」


 琉斗は和也の言葉に疑問を感じたのか、首を傾げると、はっとしたように言った。


「和也兄ちゃん! 今の『お父さん、お母さん』で思い出したんだけど、もうすぐね、幼稚園で運動会があるんだ! だから、運動会の日に来てほしいんだけど……」

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