火をイメージしたパークでは、そのテーマに合わせたアトラクションが多く揃っている。それぞれのステージにも同様に、テーマに基づいたアトラクションが点在していた。
「とりあえず、最初は何にする?」
和也が周囲を見渡しながらそう尋ねると、望が肩をすくめて答える。
「……って、それは俺たちに聞くことじゃねぇだろ? 今日の主人公は琉斗なんだから、琉斗に選んでもらった方がいいんじゃないのか?」
「あ、せやったな……」
雄介は一瞬ぎくりとした表情を見せた。どうやら、少しの間琉斗の存在を忘れていたようだ。和也の言葉に気づいた雄介は、琉斗の目線に合わせてしゃがみ込み、優しく声をかける。
「ほなら、琉斗。琉斗は何に乗りたいん?」
「んー、んー……」
いきなり振られた琉斗は少し困ったように悩み始める。遊園地には目移りしてしまうような乗り物が多いが、琉斗のような子どもには乗れるものが限られているのかもしれない。
しばらく悩んだ後、琉斗は顔を上げて言った。
「んじゃねぇ、雄介おじさんが乗りたい物でいいよ!」
その答えに雄介は驚き、目を丸くする。まさか自分に選択権が回ってくるとは思っていなかったのだ。
「ほんならなぁ?」
雄介は立ち上がり、周囲を見回す。そして、ふと視界に入った望に目を向けた。
「ほんなら、望は何に乗りたいん?」
「……って、今度は俺かよ。俺は遊園地に来たことがないって言っただろ? だから分からねぇって」
「あー、むっちゃ忘れてたわー。ほんなら、裕実!」
珍しく雄介が裕実に話を振る。もしかしたら雄介が裕実の名前を呼ぶのはこれが初めてかもしれない。
突然名前を呼ばれた裕実は、驚きのあまりいつも以上に慌てた様子で答えた。
「あー、そ、そうですね。あ、えーと……観覧車にしませんか?」
目の前に見えていた観覧車を指差しながら提案する。
「せやな……観覧車にしよっか。これならみんな乗れるし、一番無難やろ」
雄介の提案に全員が頷き、最初のアトラクションとして観覧車を選ぶことにした。
観覧車のある方向へと足を向ける五人。ここの観覧車は日本一高いと言われており、この遊園地の中でも人気のアトラクションの一つだ。
到着した五人は、まず券売機で観覧車のチケットを購入し、列に並ぶ。
「一番最初にこれにして良かったんだか、悪かったんだか……」
和也が呟くと、雄介がくすりと笑った。
「まぁ、どっちでもええやん。これから楽しむんやからな」