「それくらいになるだろうな?」
和也は後ろに並んでいる裕実と望の方に顔を向けると、望に睨まれ、すぐに正面へと顔を向ける。
そして和也は雄介の方へ顔を向け、小さな声で言った。
「やっぱり、今、望たちの方に顔を向けない方がいいぞ。なんか、やっぱり、まだ怒ってるみたいだからよ」
「ホンマか!? ほなら、今は望たちは『触らぬ神に祟り無し』ってとこかいな?」
「そういうことだ。ところでさ、観覧車に乗る時、どうするんだよ? このままだと俺と裕実、お前と望と琉斗じゃ乗れねぇんじゃねぇのか?」
「まぁ、今回は俺と和也と琉斗で乗ろうや」
「今回は仕方ねぇか。観覧車は二人だけの空間で、ちょっとカップル同士で気分を味わいたかったんだけどなぁ」
「俺だって、そうやってー。ホンマは望とラブラブイチャイチャー……」
そう雄介が最後まで言わないうちに、雄介は下の方からの視線を感じ、見てみると、琉斗が雄介と和也の会話を聞いていたらしく、じっと雄介と和也のことを見上げていた。
「ラブラブイチャイチャってなぁに?」
子供らしい質問と言えばそうなのだが、どうしてその部分だけをピックアップして覚えていたのだろうか。その部分は分からないのだが、その琉斗からの質問に、雄介は困ったような表情をしている。
「せやなぁ? 和也、どう答えたらええんやろな?」
「そ、それを俺に振るか!?」
まさか雄介が和也にそんなことを振ってくるとは思っていなかったのであろう。
和也は目を丸くしながら自分のことを指差しているのだから。
「和也なら、子供に分かりやすく教えてあげることができるって思ってな」
「あのなぁ、流石に俺は子供にその言葉を教えてあげられる程の能力は持ってねぇよ。雄介に聞いてきたんだから、そこは雄介が答えてあげるとこだろー」
そうこうしているうちに、和也たちに順番が回ってきたらしく、アトラクションの案内係が、
「いらっしゃいませ」
と声をかけてくる。
観覧車という乗り物は営業時間中はずっと動いているのだから、早く乗ってしまわないと乗り遅れてしまうだろう。