と、その時、今まで動いていた観覧車が、大きな音と共に何故か止まってしまった。
いったい何が起きたのだろうか。
「何!?」
その言葉と同時に和也は立ち上がり、今何が起きたのかを把握するために雄介も和也とほぼ同時に立ち上がり、辺りを見渡し始める。
「観覧車が止まったみたいやな」
「そうみたいだな」
二人は冷静に判断し、望達が乗っている次のゴンドラを見つめる。
確か、望達は雄介達が乗る次のゴンドラに乗っている。
雄介達が乗っているゴンドラは既に頂上近くで、当然、雄介達の次に乗ってきた望達は雄介の直後にゴンドラに乗り込んだ。
だが、安全のため、簡単には窓が開かない仕組みになっているドアや窓からでは、下にいる望達の様子を確認することができない。
どんなに窓ガラスに顔を押し当ててみても、どんなに角度を変えて見てみても、雄介達が乗るゴンドラからは望達が乗るゴンドラの様子を見ることはできなかった。
和也は何かに気付くと、
「何で、もっと早く携帯で裕実達に連絡することを忘れてたんだろう?」
そう和也は独り言を漏らし、いつも使い慣れている携帯でリダイヤル機能を使い、裕実の名前を見つけてすぐに連絡を入れる。
数回コールした後、裕実は和也からの電話に出る。
「裕実! 大丈夫か?」
「僕は大丈夫ですよ!」
その裕実の言葉に和也はある疑問を抱く。
確かに和也は電話に出た裕実に心配して『大丈夫か?』とは聞いたのだが、その答えに裕実は『僕は』と答えていた。
一緒に乗っている望もいるのだから、『僕達は』と答えるべきではないだろうか。
「ん? ちょっと待てよ? 確かに俺は裕実に『大丈夫か?』って聞いたけど、『僕は』って、どういうことだ? まさか、望に何かあったのか?」
「あ、はい……まぁ……そういうことなんですよ」
その裕実からの言葉に和也は思考回路が停止したかのように固まってしまう。
だが、とりあえず裕実から今、望がどういう状況なのかを聞くのが先だろう。