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ー天使ー108

 確実にその質問をされるだろうと思っていたが、こんなに早く質問されるとは思っていなかった望。


 流石に素直な望でもこれはストレートには答えられる訳がない。


「あ、ぅん……そうだな。もう一つの寝る部屋かなぁ? ベッドがあっただろ?」


 そう誤魔化すように言う望。 望からしてみたら、こういう風に誤魔化す事が精一杯だろう。


「うん! あった!」

「うん……まぁ、そういうことだな。 もう一つの寝る部屋」

「なら、今日、僕一人であそこで寝てもいい?」

「……へ?」


 そう何故か目をキラキラさせながら琉斗は望のことを見上げている。


「あ、いや……確かに寝るとこではあるんだけどよー……んー……まぁ、そうだな、琉斗が一人で寝るっていうんなら、そこで寝ても構わないぜ」


 望にとって咄嗟に出てきてしまった言葉だったのであろう。 きっとこう言えばまだ子供の琉斗は『一人で寝るのなら、上で寝る』と思ったのだが、どうやら望の考えとは裏腹に琉斗は大きな声で、


「一人であそこで寝たい! なら、あの部屋使ってもいいんでしょ?」

「あ、うん……まぁ……」


 琉斗からの意外な答えに流石の望も戸惑いを見せる。


 とりあえず望は雄介が居るリビングに向かうと、琉斗が見つかったことを報告し、


「な、琉斗がさぁ、地下室に居たんだけど、琉斗が地下室で寝たいって言うんだけど?」

「……へ? どういうことなん?」

「あのさぁ、お前、地下室に鍵かけるの忘れただろー。琉斗が地下室を見付けて、今、その地下室に居たんだよなぁ。だから、その地下室で寝たいって言ってんだよ」


 望は琉斗のことを下ろすと雄介の耳傍で、


「何で、あそこの部屋の鍵、こういう時に限って、開けておくんだよー」

「あ、前に行った時に鍵かけるの忘れておったわぁ」

「……ったく。だから、琉斗にその部屋が見付かるんだろ。流石にあの部屋は子供の教育上、よくないだろうがぁ。だから、俺から琉斗にはもう一つの寝る部屋だって説明しちまったんだよ」

「せやったのかぁ、だから、琉斗はあの部屋で寝たいって言うたんやなぁ? ま、寝るだけやったら、問題ないと違ゃう?」

「ああ、まぁ……確かにな……玩具とかも使い方が分からなければ多分大丈夫だしな。それに、俺は条件付けたんだ。『一人で寝るんだったら、そこで寝てもいい』ってな」

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