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ー天使ー110

 それから、雄介が集中してテストを解いている間、部屋内には雄介がペンを走らせる音と時計の秒針の音だけが響く、静かな空間が広がっていた。


 しばらくして、二十分ほどが経った頃、雄介はゆっくりとペンを机の上に置き、


「出来たー! これで、パーフェクトやったら、ええねんやろ?」

「あ、ああ、まぁな……」

「ほんなら、早く答え合わせしてや……そしたら、望んこと抱けるしなぁ」

「随分と自信があるみたいだな」

「まぁ、望がああ言うたから、気合いが入っただけやって……」

「そうか」


 雄介の言葉を軽く受け流すと、望は彼からテスト用紙を受け取り、前に作っておいた答え用紙を手にして答え合わせを始めた。


 すると、雄介が自信満々に言っていた理由が分かってきた。前半の半分は見事に正解していたのだ。


 しかも、この前半部分は、望がまだ琉斗を探している間に解いた問題で、雄介がまだ望と約束をしていない時のものだった。


 後半部分は、例の約束をしてから解いた問題だ。


 望は順番に丸を付けていく。そして、最後の一問に丸を付け終えると――。


「え!? マジで!? ……お前、凄いんじゃね?」

「全部、正解やったやろ?」

「あ、まぁ……そうなんだけどさ」

「そりゃ、望からあんな条件もらったら、気合いが入ってやる気も出るってもんやろー?」

「あ、まぁ……そうかもしれねぇけどさ。でも、この問題、相当難しいやつばっかり選んだんだぞ……しかも、お前、しばらく勉強なんてしてなかったんだろ?」

「そりゃ、何年ってまともな勉強はしてなかったなぁ」

「それで、満点って……。本当はお前、頭いいんじゃねぇのか?」

「頭は良くはないやろな……めっちゃ普通の学校に行ってた訳やし、私立とかにも行ってない訳やし。ほら、そこは望のおかげなんやって……」

「でもな……こんなに簡単に解ける訳がねぇんだけどなぁ?」

「ん、まぁ、とりあえず、ええやろ? 満点取ったんやから……今日は望とラブラブーってな」

「あ、ああ、まぁ……とりあえず約束だしな」


 望は、未だに雄介の頭の良さに驚いている様子だった。これなら、心配することなく医大に合格できるだろう。

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