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ー決心ー54

「ほんなら、下から来ている奴も奴らの仲間って可能性が高いっちゅう事やんな?」


 下からも上からも、望と雄介は犯人達に追い掛けられているようだ。


「とりあえず、この三階で待機しといて、犯人達の気配がなくなってから、もう一度、下に下がるしかないって事か」


 望は雄介の言葉に頷くと、雄介に腕を引かれ、望達は三階にある病棟に向かう。そこで一先ず、犯人達をやり過ごすためにどこか隠れられそうな場所を探す。


 ここ三階フロアは全部病室らしく、望達が隠れられるような場所は無いように思える。


 流石に病気や怪我で入院している患者さんの部屋に入ってまで隠れる訳にはいかない。隠れるとしたら、トイレ位しかない状態だ。


 そんな望達の状況は、きっと犯人達の方は分かっているだろう。もしかしたら、そのために望達は犯人達によって三階に誘導されてしまったのかもしれない。


「しゃーないな……もう、ダメ元でトイレに隠れておるしかないようやな」


 望は雄介の言葉に頷くと、二人は男子トイレではなく、女子トイレの一番奥にある個室へと逃げ込む。


「こっちやったら、少しは時間稼ぎくらいは出来るかもしれへんやろ? 普通、男やったら、男子トイレに行くと思うかもしれへんしな」

「だけど、こっから、どうするんだよー! ここだと完全に逃げ場無くなってるんだぞ!」

「もう、そうなったら、俺が望を絶対に守るし、大丈夫やって……」


 雄介は真剣な目で望のことを見つめると、望に雄介のその真剣さが伝わったのであろう。望も雄介の瞳を見つめ、


「分かった……俺は雄介のことを信じているからさ」

「ああ、ありがとうな」


 そして、こんなピンチに襲われているのにも関わらず、自然と唇が合わさる二人。


 暫く、そのままでいた二人だが、誰かの足音に現実へと戻され、望は瞳を開ける。


 そう、望の瞳に飛び込んできたのは窓だ。


「な、雄介! この窓から外に出られないか?」


 その窓は床からだいたい百七十センチ位の場所にあって、大人が一人通れる位の窓の大きさしかない。


「外には出られそうやけど、ココ三階やぞ……」

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