「でもさ、この状況で逃げ場はここしかねぇんだぞ。 三階くらいから、飛び降りても打ち所さえ悪くなければ、骨折くらいで済むんだぜ」
「あんなぁ、そんでも足なんか怪我してもうたら、逃げられるもんも逃げられなくなってもうやろうが……」
確かに雄介の言う通りである。
「そんなこと言ったってさぁ、そこからしか今は逃げ場がねぇだろうが……」
「確かにそうなんやけどな……ホンマに犯人に追われた時には、俺が望んことを守るって言うたやんかぁ」
「だけど、お前はそんな経験がねぇんだろ! なら、必ず犯人に勝てるなんて保証はねぇだろうが!」
「ん、まぁ……ああ、まぁ、そうなんやけどな」
「それにもし、相手がボクシングとか格闘系に長けていたら、絶対に勝ち目がねぇ訳だしよ。 それに……俺にとって雄介は大事な人なんだから、その……」
望は言葉を一旦止めてしまうのだが、雄介のことを見上げ、
「それに……俺はお前に絶対に死なれちゃ困るんだからな!」
雄介は望の言葉に心を動かされたのか、
「分かった……」
とだけ望に告げ、窓に両手を掛けると、レスキュー時代に鍛えた腕を使い、自分の体を持ち上げて窓を開け、下までの距離を確かめようと窓の下を覗く。
すると、意外なことが分かったようだ。
確かにここは地上から三階の場所ではあるのだが、ちょうどこの場所は普段、病院の出入口のおかげで軽く屋根のような所がある場所だ。だからなのか、三階の場所からだと一階分くらいの高さしかない。
「望! こっからなら、怪我せずに外に出られそうやな!」
そう雄介が最後まで言葉を言わないうちに、望から合図が送られてきた。そう、望は人差し指を唇の前で立てていたのだ。
それに気付いた雄介は小さな声で、
「どないしたん?」
「犯人達がもう隣にある男子トイレまで来てるみたいなんだよ。ドアを凄い勢いで開けてる音が聞こえてきてみたいなんだよな」
「ほなら、望も早よ……ここまで来い! こっからやと、もしアイツ等に女子トイレに入ってきたら、見られてまう場所やしな」
「ああ、分かった」
そう言うと雄介は先に外に出る。 そうすることで雄介に続き、望もその窓から外に出られるからだ。