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ー決心ー55

「でもさ、この状況で逃げ場はここしかねぇんだぞ。 三階くらいから、飛び降りても打ち所さえ悪くなければ、骨折くらいで済むんだぜ」

「あんなぁ、そんでも足なんか怪我してもうたら、逃げられるもんも逃げられなくなってもうやろうが……」


 確かに雄介の言う通りである。


「そんなこと言ったってさぁ、そこからしか今は逃げ場がねぇだろうが……」

「確かにそうなんやけどな……ホンマに犯人に追われた時には、俺が望んことを守るって言うたやんかぁ」

「だけど、お前はそんな経験がねぇんだろ! なら、必ず犯人に勝てるなんて保証はねぇだろうが!」

「ん、まぁ……ああ、まぁ、そうなんやけどな」

「それにもし、相手がボクシングとか格闘系に長けていたら、絶対に勝ち目がねぇ訳だしよ。 それに……俺にとって雄介は大事な人なんだから、その……」


 望は言葉を一旦止めてしまうのだが、雄介のことを見上げ、


「それに……俺はお前に絶対に死なれちゃ困るんだからな!」


 雄介は望の言葉に心を動かされたのか、


「分かった……」


 とだけ望に告げ、窓に両手を掛けると、レスキュー時代に鍛えた腕を使い、自分の体を持ち上げて窓を開け、下までの距離を確かめようと窓の下を覗く。


 すると、意外なことが分かったようだ。


 確かにここは地上から三階の場所ではあるのだが、ちょうどこの場所は普段、病院の出入口のおかげで軽く屋根のような所がある場所だ。だからなのか、三階の場所からだと一階分くらいの高さしかない。


「望! こっからなら、怪我せずに外に出られそうやな!」


 そう雄介が最後まで言葉を言わないうちに、望から合図が送られてきた。そう、望は人差し指を唇の前で立てていたのだ。


 それに気付いた雄介は小さな声で、


「どないしたん?」

「犯人達がもう隣にある男子トイレまで来てるみたいなんだよ。ドアを凄い勢いで開けてる音が聞こえてきてみたいなんだよな」

「ほなら、望も早よ……ここまで来い! こっからやと、もしアイツ等に女子トイレに入ってきたら、見られてまう場所やしな」

「ああ、分かった」


 そう言うと雄介は先に外に出る。 そうすることで雄介に続き、望もその窓から外に出られるからだ。

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