彼が浴びているシャワーの音がする。彼は今、完全に無防備だ。俺は彼が持っているグロック19の拳銃を奪って、その銃口を自分のこめかみに当てた。妙な緊張感が走る。
「バーン!」
と口で効果音を付けて、俺は目をひん剥いて舌を出して死んだフリをする。あははっ、楽しーい!!
「何してんだ?」
シャワーブースから出てきた、腰にタオルを巻いた彼に、床に横たわって死んだフリをしている滑稽な俺を見られてしまった。恥ずかしさで動ける訳もなく、いい言い訳が思い付くまで死んだフリをしようと思った。
「……僕の銃、何で持ってんの?」
と責め立てられるように聞かれても、終始、無言を貫く。彼は俺の手から自分の銃を取ると、その銃口を俺の口の中に入れてきた。
「……っ!?」
これには思わず身体が動揺して、彼の方を真っ直ぐ見つめてしまった。
「僕のこと、殺そうとしたの?」
そう問いかける彼は冷徹そのものだった。俺は泣きそうになりながら、頭を小さく横に振った。心臓の鼓動がうるさく鳴り響く。
「ごめん、怯えさせたね。でも、僕の銃には今後一切、触らないようにね」
彼は銃を持ちながら、部屋着に着替えに行った。部屋着に着替えたにもかかわらず、彼はホルスターを太ももに付けていて、銃を常に携帯していた。でも、言えない。妄想自殺未遂して楽しんでたなんて……!!
「ご主人様ぁ、」
「何?」
呼んだはいいが何も言えなくて、黙り込んでしまった。どう接したらいいのか、わからない。
「どうしたの?何か言いたいことでもあるの??」
彼は俺に近寄ってきて、俯いた俺の頭を優しく撫でる。
「……怒ってる?」
「何で?怒ってなんかないよ」
彼はニコッとした笑顔を見せて、こんなことを聞く俺のことを不思議そうにしている。
「だって俺が、勝手に銃を触ったから……」
「あぁ、あれは、少し吃驚しただけだよ。ごめんね、怯えさせちゃって」
彼が気まずそうに笑う。
「俺、殺そうとしてないよ」
「そう、良かった。君のことは信頼してるからね」
そう言うように教え込まれたような台詞。
「じゃあ、それ、外してよ」
と彼が脚に付けているホルスターを指さした。
「それは……」
彼の表情が曇る。
「やっぱ俺のこと信頼なんかしてないんでしょ?軽々しくそんな言葉使わないで」
と言い放ち、俺はベッドルームに引きこもった。仲直りしたかったのにもっと関係を悪化させてしまった。あぁ、抱きたい!そしたら、全てうまくいくのに。