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第3話 連鎖する死の恐怖

慎一郎の死から一夜明けた翌朝


新たな悲劇が村を襲った


村の古老である山本老人が、自宅で変死体となって発見されたのだ


発見したのは朝の散歩をしていた佐藤家の父親、浩二だった


彼の第一声は悲鳴に近かった


・・・・・


「た、田村さん!大変です!」


駆けつけた田村巡査が見たものは、彼の警察官人生で最も衝撃的な光景だった


山本老人は自宅の居間で、まるで何かに怯えるように壁際に身を寄せ


両手で顔を覆ったまま死んでいた


その表情は恐怖に歪み、瞳孔は異常に拡大していた


だが最も不可解だったのは


老人の周囲に残された痕跡だった


畳には深い爪痕のような傷が無数に刻まれており、まるで巨大な獣が暴れ回ったような有様だった


しかし、侵入の形跡は一切なかった


戸締りは完璧で、窓も内側から鍵がかかっていた


「一体何が起きたというんだ・・・」


田村巡査は頭を抱えた。


検死の結果、山本老人の死因は心臓麻痺と判明したが


極度の恐怖によるものであることは明らかだった


まるで何か想像を絶する恐ろしいものを見て、ショック死したかのようだった


『山桜亭』に戻った田村巡査の報告を聞いた宿泊客たちの動揺は激しかった


特に佐藤家の母親、順子は完全にパニック状態になっていた


「もうこの村にはいられない!!!今すぐ帰りましょう!!!」


順子の訴えは切実だった


八歳の息子、翔太のことを考えれば、一刻も早くこの不気味な村から離れたいと思うのは母親として当然だった


夫の浩二も同意見だった


「そうだな、車で来てるから、今すぐにでも出発できる」


佐藤家は急いで荷物をまとめ、他の宿泊客に別れを告げることなく山桜亭を後にした


残された人々は、彼らの判断を羨ましく思った


しかし、それは大きな間違いだった


・・・・・


佐藤家が村を出発してから約三十分後、山道で激しいブレーキ音が響いた


そして続いて起きたのは、金属が激しく衝突する音だった


急いで現場に駆けつけた田村巡査と村人たちが見たものは


惨状を極める交通事故だった


佐藤家の車は山道のカーブで制御を失い


ガードレールを突き破って崖下に転落していた


車は大破し、三人の家族は全員即死していた


しかし、事故現場には不自然な点があった


ブレーキ痕は確かに残っているものの


なぜ経験豊富なドライバーである浩二が、慣れた山道でコントロールを失ったのかが不明だった


車の整備状況にも問題はなく、天候も良好だった


「まるで・・・まるで何かに驚いて急ハンドルを切ったような痕跡ですね」


田村巡査の呟きが、集まった人々の不安を増大させた


その夜『山桜亭』に残された宿泊客たちは深刻な恐怖に陥っていた


健と美咲、山田と由紀のカップル


そして息子を失った橋本夫妻


彼らの表情は絶望に近かった


「もう誰も村から出られない・・・」


美咲の声は震えていた


源蔵の表情はさらに暗くなっていた


「『祠』の封印が破られた以上、妖怪の呪いは止まらないでしょう」


橋本清は息子の死への悲しみと、この状況への恐怖で憔悴しきっていた


妻の雅子は泣き続けており、もはや正常な判断ができる状態ではなかった


「俺たちは・・・俺たちはどうなるんですか」


山田の声は絶望に満ちていた


しかし、真の恐怖はまだ始まったばかりだった


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