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第7話 最後の夜

五日目、村ではさらに多くの死者が出た


診療所の松田医師

雑貨店の店員


そして村の婦人会長


皆、同じように化け物に襲われて命を落とした


『山桜亭』に残された人々は、健と美咲、山田と由紀、橋本夫妻、そして源蔵だけとなっていた


田村巡査の死により、彼らを守る術はほとんど残されていなかった


「もう終わりです」


源蔵は諦めたような表情で呟いた


「『祠』の封印を破られた以上、この村にいる者は皆死ぬ運命なのです」


しかし健は諦めなかった


「そうだ・・・火が効くなら、もっと大きな火で対抗できるんじゃないか」


健の提案に、源蔵は激しく反対した


「無理です!!そんなことをしても無駄です」


源蔵の声は震えていた


「あの化け物は不死の存在、人間の力では太刀打ちできません」


しかし橋本清が口を開いた


「息子を殺された以上、やれることは全てやってみるべきだ!!」


山田も同意した


「そうです!!このまま座して死を待つよりは、戦ってみる価値があります」


「だめです!!!」


源蔵の反対は異常なほど激しかった


「火など使っても、かえって化け物を怒らせるだけです、やめてください!!」


健は源蔵の態度に疑問を感じ始めた


なぜこれほど必死に反対するのか


まるで火を使われては困るかのような・・・


「やってみましょう」


健は決意を固めた


「源蔵さんがなんと言おうと、僕たちにはやってみる権利があります」


山田と橋本清も健に協力することにした


三人は旅館中から火鉢を集め、薪や燃えやすい物を準備した


源蔵は終始怯えたような表情で、彼らの準備を止めようとしていたが、三人の決意は固かった


「本当にやめてください・・・」


源蔵は泣きそうな顔で懇願したが、もはや誰も彼の言葉に耳を貸さなかった


・・・・・


最後の夜、化け物は約束通り現れた


しかし今度は一体ではなかった


大広間に現れたのは、死んだはずの村人たちだった


山本老人、中村、松田医師・・・皆、化け物と同じような醜悪な姿に変わり果てていた


「ついに時が来た」


最初の化け物が言った


「お前たちも我らの仲間になるのだ」


しかし健たちは準備していた。火のついた薪を手に、化け物たちに立ち向かった


「来るなら来い!」


健が燃える薪を振りかざした


山田と橋本清も同様に、火のついた薪を持って戦闘態勢を取った


化け物たちは火を見て、明らかに怯んだ


しかし完全に退散することはなく、火の届かない場所で様子を窺っていた


緊迫した状況が続いた時、突然源蔵が立ち上がった


「もういいでしょう・・・」


源蔵の声は、これまでとは全く違っていた


恐怖ではなく、諦めのような響きがあった


健たちは困惑した


「何を・・・何を言ってるんですか」


源蔵は化け物たちに向かって言った


「計画は破綻しました、もう終わりにしましょう」


その瞬間、化け物たちの動きが止まった


まるで源蔵の命令を待っていたかのように


「お疲れ様でした」


健と美咲は理解に苦しんだ


「い・・・一体どうなってるんだ?」


源蔵は振り返った


その顔には、もはや恐怖はなく、冷酷な笑みが浮かんでいた


「申し訳ありませんが・・・あなた方には死んでいただきます」


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