「今回の鬼の数は二体だ」と白木。「われわれが知る限りのことだが。」
「大きさは?技の種類は?」と弘樹。
「どうなのかね、広瀬先生」と白木。
「二体とも人間よりかなり大きいわ」と広瀬。「伝承の通りよ。」
「技の種類というのは、得物という意味かい?」と斉藤。
「まあ、それもあるけど」と弘樹。
「被害者の状態から、刃物と棍棒のような鈍器を使うようだよ」と斉藤。
「刃物を見たの?」と弘樹。
「見た者はいない。誰も生きて帰ってないのだよ」と斉藤。
「十八年前はどうだったの?」と弘樹。
「相手の鬼は一体だったそうだ」と白木。「大人数で戦ったんだ。さっきも言ったように、その中に先代の修羅がいた。そして広瀬先生もいたんだ。」
「技ってどういう意味なの?」と広瀬。
「飛んだり、水の上を走ったり、風を起こしたりっていうことだよ」と弘樹。
「念力を使うということ?」と広瀬。
「そうだよ」と弘樹。
「そんなことはなかったわ」と広瀬。「体が大きくて、敏捷で、力が強かった。」
「それだけ?」と弘樹。
「それだけとはどういうこと?」と広瀬は少し声を荒げた。
「鬼の死体が消えてしまったそうだよ」と白木。「事件の数日後のことだったらしい。」
「それは盗難だと言われていますが」と斉藤。
「それはどうかね」と白木。
「本当にこの子たちを鬼退治に連れて行くのですか?」と斉藤。
「君は勘違いをしているよ」と白木。「君たちがこの方たちをサポートするんだ。」
「何を言ってるんですか!」と斉藤。「無茶ですよ。こんなひ弱な二人を連れて行くなんて。」
広瀬は無言で白木を睨んだ。
「君たちは話を聞いてなかったのか?」と白木。「私はこの方たちに依頼しているんだ。」
「あなたはこの少年の指図に従って戦えと言うのですか?」と広瀬。
「もうすでに君たちはずいぶん死傷者と行方不明者を出しているじゃないか」と白木。「このままでは君たちが全滅してしまう。」
「そんなことはありません。今度は絶対に勝てます」と斉藤。
「元自衛官の何人かは自動小銃や手榴弾まで持って行ったのだろう?」と白木。「君の仲間たちは機動隊の盾を持って防弾チョッキを着こんでショットガンを装備していた。」
「油断したせいです」と広瀬。
「そうかね」と白木。「通信の暇もなく倒されている。いい加減にしなさい。君をこの仕事から降ろせと言っている人もいるんだよ。」
「それでは他に誰がやるのですか?」と広瀬。
「だから、弘樹君に依頼したのだ」と白木。
「いいですよ、ぼくたちだけで行きますから」と弘樹。
「それはだめだ。頼むから彼らも連れて行ってくれ。鬼との戦いの経験を積ませたいのだ」と白木。
「お断りします!」と広瀬。「そんな失礼な、こんな子供たちに経験で劣るなんて侮辱です……。」
「私たちは、この方たちとは別行動で鬼と闘うことにします」と斉藤。
「だめだ、君たちには弘樹君たちのサポート役として働いてもらう」と白木。「これは業務命令だ。」