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第73話 依頼(4)

 広瀬はかろうじて呼吸を整えて言った。「仕方ありません。この方たちのサポートをいたします。」


「ただし、現場でのことは現場に任せてもらいます」と広瀬。


「ああ、分かっているよ」と白木。「弘樹君たちは命令系統に入らないから安心したまえ。その方が君たちも気が楽だろう?」と朱良の方を向いて言った。


「ところで、白木さんはご当主様と随分親しいようですが、お知り合いなのですか?」と斉藤。


「実はね、私の娘が弘樹君と高校の同級生でね」と白木。「だから弘樹君はときどきこの家に遊びに来てくれているのだよ。」


 斉藤と広瀬は驚いた顔をした。「ひょっとしてお付き合いされているのですか?」と斉藤。


「娘が弘樹君に惚れ込んでおってな」と白木。「朱良さんには近々ご挨拶をしたいと思っておったのだ。」


「弘樹からお嬢様のことは伺っております。友達のいない弘樹に、ずいぶん親切にしていただいていると」と朱良。


「なになに、弘樹君ほどの器の男子はそうそうおらぬからな」白木。


「ただ失礼なことにならなければと少し案じております」と朱良。「弘樹はひどく浮気者なので。」


「弘樹君ほどの男子ならさぞかしモテるでしょうから、娘も心得ておるはずだ」と白木。「親が口を出すような無粋なまねはしないつもりだよ。」


 斉藤と広瀬がうんざりした顔をした。当の弘樹はそっぽを向いている。


「娘の縁で弘樹君がこの家に来てくれていたことは、私たちにとってとんでもない幸運だよ」と白木。


「それでいつ行くんですか?」と弘樹。


「今すぐお願いするよ」と白木。「車を用意しておいたから、君と朱良さんはこのまま花山道場で支度をしてくれないか。運転手には指示を出しておいたから。広瀬先生と斉藤先生は部隊を連れて現場へ向かってくれ。」


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