広瀬と斉藤、それから朱良と弘樹は玄関に向かって廊下を歩いた。玄関ホールに入ったとき、弘樹の耳元で「弘樹君」と声がした。
朱良がはっと振り返ると弘樹の背中に少女がぴったりと抱きついている。それまで全く気配がなかったのに。
「やあ、結衣ちゃん」と弘樹。
驚いて目を見開いている朱良に「姉さん、この子が結衣ちゃんだよ」と弘樹が言った。
朱良は、弘樹から聞いていた気配を消す少女のことを思い出した。
「はじめまして、白木結衣です」と結衣が弘樹の横に立ってかわいくお辞儀をした。部屋着とは思えない、花をあしらった薄い桃色のワンピースを着ている。豊かなバストについ目が行ってしまう。
「はじめまして、姉の朱良です。弘樹のことを、いつもかわいがってくれてありがとう」と朱良。
「どういたしまして」と結衣。「私はもっと弘樹君にかわいがって欲しいです。」
弘樹は相変わらずの仏頂面でそっぽを向いている。広瀬と斉藤は手を止めて弘樹らの様子を見ていた。
「弘樹君、今回の鬼は、前に出た鬼より強いわ。でも弘樹君なら勝てるから、心配しないで」と結衣。「鬼に出会うまで、気配を消しておいて。それから、できれば一体ずつ朱良さんと二人で相手をするのよ。そうすれば余裕で倒せるから。」
「結衣ちゃん、ありがとう」と弘樹。
話を聞いていた広瀬と斉藤は顔を見合わせた。