春の光が差し込む教室。カーテンの揺れる音が心地よく、
桜はすでに半分ほど散り、校庭の風景はどこか夢の残り香のような色をしている。
始業式を終え、新クラスの教室に戻ってきたものの、誰と話すでもなく席に座っている悠真。もともと目立つタイプではないし、積極的に友達を作る性格でもない。
そんなときだった。
——カツ、カツ、と規則正しい足音が廊下から響いてくる。
やがて教室の扉が静かに開き、一人の少女が姿を現した。
「成瀬悠真」
教室の空気が一瞬で凍る。
整った顔立ちに長い黒髪、そして制服の上からでも分かるほどに整った姿勢と気品。その少女は、生徒会長・
「……へ?」
自分が呼ばれたと気づくまでに数秒かかった。なにせ生徒会長に話しかけられるなんて、人生で一度あるかないかのイベントだ。
紅は悠真の机の前に立ち、真っすぐに彼の目を見て言った。
「あなた、今日から『恋愛観測部』の部長よ」
「…………は?」
一瞬、意味が理解できなかった。
「え、いやいやいや。何それ、聞いたことないんだけど。てか、俺、そんな部活入った覚えないし」
「あなたに選択肢はないわ。これは生徒会の正式な裁定。全会一致で決まったことよ」
「全会一致って、誰が決めたんだよ!?」
思わず声を上げる悠真に、紅は冷静に、そして美しく微笑んだ。
「私よ」
「独裁じゃねーか!」
教室がざわめく。新学期早々、注目の的だ。視線が刺さるのを感じながら、悠真は頭を抱えた。
「ちょっと待って。そもそも『恋愛観測部』って何……?」
「恋愛という感情が、人間の行動や関係性にどのような変化をもたらすのかを観測し、記録し、分析する部活よ」
「重すぎるだろ!もっと軽いノリでいこうよ青春は!」
紅はカバンから一枚の紙を取り出して、悠真の机に置いた。
「すでに五人の部員が申請済みよ。彼女たちの恋愛観測対象として、あなたには相応の資質があると判断したわ」
「え、俺って……観測する側じゃなくてされる側なの!?」
「両方よ。恋愛は一方通行では成立しないから」
にっこりと微笑むその表情は、どこか楽しげですらあった。
——こうして、成瀬悠真の予測不能な学園生活が始まった。
恋愛観測部に集まったのは、それぞれ異なる魅力と秘密を抱えた五人の少女たち。
無表情な天才型、ツンデレの生徒会長、愛嬌抜群のギャル、世話焼き幼なじみ、そして不思議系の後輩。
彼女たちと関わる中で、悠真は“恋”という不可解な感情と、自分自身の心に向き合っていくことになる——
【主人公】
成瀬
学年:高校2年生
属性:鈍感・常識人・平凡系主人公
口癖:「俺、普通に生きてたいんだけど…」
クラスでも特に目立たない、“モブ寄り”の男子高校生。
運動も勉強も中の下、目立つような趣味もなし。
しかし「女の子の恋愛感情を無意識に引き寄せる」という不思議な体質を持っており、それが原因で学園生活が一変する。
彼自身は恋に奥手で、他人の好意にも全然気づかない。
ただし、「本音を聞き出す力」には妙に長けており、ヒロインたちの心を自然にほどいていく。
【ヒロイン①】
神崎
属性:ツンデレ生徒会長
→ 成績優秀・品行方正・鉄壁の完璧人間だが、実は異常なまでに恋愛経験ゼロ。
→ 恋愛を「くだらない」と切り捨てていたのに、悠真の鈍感っぷりに振り回され、ペースを乱されていく。
→ 弱点は可愛いものと妄想癖。家ではめちゃくちゃ乙女。
「勘違いしないでよね!?別にアンタのためじゃ…ないんだからっ!」
【ヒロイン②】
白石
属性:清楚系・腹黒文学少女
→ 一見すると落ち着いた優等生。図書室の常連で、悠真にも優しく接するが、裏では何を考えているのかわからない。
→ 悠真に興味を持ち、彼の“隠された体質”に気づき始める最初の人物。
→ 文学的かつ毒舌な愛情表現がクセになる。
「ねえ、先輩。私のことを“普通の女の子”だと思ってたなら…それ、間違いですよ?」
【ヒロイン③】
天音 ことり《あまね ことり》
属性:妹系(ロリ)・幼なじみ
→ 幼稚園からずっと一緒の幼なじみ。常に明るく距離感ゼロ。
→ 悠真の家にもよく遊びに来るため、「お兄ちゃん的ポジション」に収まっていたが…恋心が暴走気味に成長中。
→ 実は悠真にずっと片想い中。だが、他のヒロインたちの出現により、ついに行動に出る。
「…もう、“お兄ちゃん”じゃ足りないんだよ、悠真くん。」
【ヒロイン④】
黒羽
属性:無口・不思議ちゃん・天才肌
→ 理系分野で世界的賞を受賞している天才。感情表現が乏しく、なぜか悠真によく懐く。
→ 会話が噛み合わないことも多いが、純粋ゆえにストレートな好意を向けてくる。
→ なぜか悠真を「研究対象」としているが…?
「悠真。きみを解析してみたい。…わたしの、特別な分野で。」
【ヒロイン⑤】
金森 ルナ《かなもり るな》
属性:陽キャ・ギャル・姉御肌
→ ノリが良く、誰とでもすぐに打ち解けるタイプ。実は誰よりも“他人思い”な優しい性格。
→ 悠真の「気取らなさ」に安心感を抱き、次第に気になる存在に。
→ 過去のトラウマがあり、恋に慎重。でもいざというときは大胆。
「…あたし、マジ恋とかしないつもりだったんだけどさ。悠真には、嘘つけなかったわ。」