ボロ小屋に仕上げてある建物に入ってみると、新品の冷暖房に家具家電が一通り揃っていた。
無人島の醍醐味である火起こしはIHヒータがあるから必要無いし、水分も定期的に未開封の飲料ペットボトルが漂流してくるので問題無い。
もはや無人島生活の体を成していない。無人島にしては衣食住整いすぎている。
「もう別荘じゃんこれ。俺の想像してた無人島生活じゃない!」
そういえば前も似たような小屋があったなと物思いに耽る。
少し前、九条家所有の山で一歌と二人きりで遭難したことがあった。その際、たまたまボロボロに加工された小屋を発見して。その小屋は、外観に反して内装はしっかりしており、家具家電が揃っていて正直快適だった。
これが金持ちの道楽かと思いながら冷暖房を眺めていた。すると、背中に柔らかい感触と共に、人肌の暖かさが身体全体を包み込んできた。
後ろを向くと一歌が抱きついていた。
「一歌。それは好きな男の人にやる行為だ。誰にでもするものじゃない」
「朝陽くんにしかしないのに(ボソッ)」
「なんか言ったか?」
「ううん。何も言ってないわ」
「にしても無人島に来てから何も食べてないからか腹が減ったなぁ。でも無人島だし現地調達しなきゃだなぁ」
「大丈夫。何故かたまたま食糧がいっぱいあるから一カ月は大丈夫よ!」
一歌は食材たんまり入ってる冷蔵庫を開けてそう言った。
その光景を見て『デスヨネー』としか感想がでない俺がいる。せっかくの無人島生活なんだから、食糧ぐらい現地調達させてほしい。
「私の手料理で朝陽くんの胃袋をゲフンゲフン……この食材を使って、私の手料理を朝陽くんにご馳走するわ!」
「それじゃ期待しとくよ」
◇使用人視点
「家政婦長! お嬢様が胃袋を掴む作戦に出ました!」
「いいですな。あの男をお嬢様の料理でしか満足出来ない身体にすればこっちのものです!」
「回りくどいなはよくっつけや」