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九条一歌は朝陽くんを独占したい

 恋心を理解したのは高校生を卒業する直前の頃だったわ。


 あの日はいつもどうり、竹田家に通っていたの。


「おはよう朝陽くん。叩き起こしに来たわよ!」


「はいはい。起きてるよー」


 朝陽くんと通学中、事件は起きたわ。


「僕の九条さんを誑かしている男の家はここか。殺してやる。男を殺したら九条さんが僕に振り向いてくれるはずだ。ウォォォォ死に晒せぇぇぇ!」


 突然、私のストーカーが刃物を持って襲いかかってきたの。情けないことに私は、腰を抜かして動けなくなっていたわ。


 でもね、朝陽くんがストーカーを撃退してくれたわ。とてもかっこよかった。


「腰を抜かして動けなくなった? 仕方ないなぁ。おぶってってやる」


 言葉に甘えて朝陽くんにおんぶされて登校したわ。


 朝陽くんの背中は暖かくて、筋肉があるのかガッシリしていて、匂いも私好みで……


 その出来事から胸がドキドキして、熱くなって、朝陽くんに目が離せなくなったの。


 端的に、朝陽くんをただの幼馴染として見れなくなっちゃった。そのことをお爺様に相談したら、その晩はお赤飯だったわね。



        ◇



 朝陽くんは、恋愛に関しては鈍感らしいのよね。いくら私が猛アピールしても、全て幼馴染の戯言なんだなと思われて片付けられてしまうの。


 このままじゃいけない。焦った私はありとあらゆる資料をかき集めて攻略方法を練っていたわ。すると『吊り橋効果』という心理現象を発見したの。


 吊り橋効果、不安や緊張から生じる心拍数の上昇といった身体的反応を、相手への恋愛感情だと誤って認識する心理。


 私にとってそれは、くもの糸を掴むような画期的なものだったわ。


 幸いにも私にはお爺様のおかげで吊り橋効果を実現できるような財力がある。万が一お爺様の援助を受けれなくても、その時は私の会社を売り飛ばせばいい。


 私にはもう迷うものは無かった。使用人達に協力を募り、作戦を決行したの。


 最初の作戦、銀行強盗。私が半分以上株を持っている銀行で、私と朝陽くんはたまたま居合わせている所に、使用人達が銀行強盗をするというもの。精神的恐怖で私に依存させる計画だったのだけど、失敗に終わったわ。


 敗因、朝陽くんが強すぎた。まさか朝陽くんが単独で強盗に扮した使用人達を撃退するとは思ってなかったの。


 二回目は、私が所有している山で朝陽と私が遭難するというもの。これも失敗に終わったわ。


 敗因、何故か朝陽くんに遭難を意図的に起こしたことがバレてしまったの。それに少し山を降りればすぐ街中だったのも敗因の一つね。


 今までの敗因を活かして使用人達と協議を重ねた結果今回は、無人島に朝陽くんと私で二人きりが最適解だと踏んだわ。今回こそ成功すれば良いのだけど……

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