小屋に帰ってすぐ、俺は彼女に『誰か裏に協力者はいるのか』と聞いてみた。
すると『使用人は使ったけどね』と前置きを入れた後、一歌はこう答えた。
「まず、お爺様はこの件に絡んでないわ。これは私の独断よ」
「独断って、どうしてこんなことを?」
さらに問いただすと、一歌はプルプル震えながら甲高い声で捲し立て始めた。
「だって私、朝陽くんのことが好きなの!」
◇使用人達の反応
「家政婦長! お嬢様がついに告白しました!」
「抱けー! 抱けー!」
「はよくっつけや」
◇竹田朝陽視点
好き?
今、一歌が好きって言った。今この場には俺しかいない。一歌って俺のこと好きだったのか?
「えっ? もしかしてじいさんに言わされてるとかじゃなくて……」
「無いわよ! お爺様の可能性は排除して!」
一歌が両手でバツを作りながらじいさんが裏にいることを否定した。
てことはガチ告白!
予想外である。てっきり恋愛感情が無いものだと踏んでいたから。
なんならじいさん達の『孫同士くっつけちゃおう大作戦』の予定を狂わすために俺から告白して、一歌にこっぴどく振られようと思っていたのに。
そしたら幼馴染としての関係も維持できたのに。
「俺にとっては君と付き合うのは願ってもない事だ」
「やったわ!」
「でも、恋人になって関係が壊れるのは怖い。俺は幼馴染から変わるのが怖い」
それを聞いた一歌は意外そうな表情で口を開く。
「怖いものなんてなさそうな印象だったのに意外だわ。案外朝陽くんは臆病なのね。私がこんなに勇気出して告白したのに!」
「そう。俺は臆病だ。怖がりだ。だから付き合うにしても限定的にしよう。少しずつ関係性を変えていく形で」
「……限定的ってどういうこと?」
「いわゆる幼馴染以上恋人未満ってやつ」
「いやよ! 私は今すぐ朝陽くんとイチャイチャしたいの!」
一歌が泣きながら迫ってくる。
「……今はハグで我慢してくれないか?」
「いや!」
そう言うと一歌が抱きついてきた。柔らかい二つのまんじゅうが俺の身体に密着してくる。
「私は今すぐ朝陽くんとイチャラブエッチしたいの!」
「……避妊道具ないぞここ」
「なんで変なところ律儀なのよ! でも裏を返せば、避妊道具あればシテくれるのね!」
俺としては避妊してくれたら断る理由は無い。むしろ彼女としたいぐらいである。
「ま、まあ。一応俺たち恋人になるからな……避妊も、赤ちゃんができたら色々と困るという理由だからな」
しかし、小屋中を探した結果、避妊道具は無かった。おそらく、S◯Xまで発展するのは使用人にとっても想定外だったのだろう。
「クッ、使用人達爪が甘いわよ……これじゃ朝陽くんとイチャラブエッチできないじゃない。そうだわ、いっそ襲っちゃえば!」
「勘弁して? 九条家の令嬢を妊娠させた暁には大変なことになる」
「ん? そうなれば貴方が婿入れすればいいじゃない?」
「無敵か?」
令嬢としてあるまじき発言を連発しつつ、俺に襲い掛かろうとする一歌を宥めながら、無人島の夜を過ごした。