こうして俺たちは幼馴染以上恋人未満となった。一歌はすぐにでも恋人関係になりたいようだったが、なんとか説得して最終的には納得してくれた。
我ながらめんどくさい性格だなって思っている。でも少しずつ、恋人みたいな関係になれればいい。俺はそう思っている。
その翌日、たまたま居合わせた救助船で俺たちは無人島から脱出。帰路についたのだった。
しかし船に乗ってる道中、使用人達に『ギリギリ及第点ですね』やら『お嬢様じゃなかったら愛想つかれてますよ?』やら『日和らずキッパリ恋人になってはよくっつけや』とたくさん言われたのは堪えた。
俺は恋愛歴童貞なのだ。あんまり要求されても困る。
◇
「やっと帰ってこれたぁぁぁ! 我が家、一人暮らし万歳!」
俺が借りてるアパートは正真正銘のボロアパート。地震が起きたらひとたまりもないだろうそれは、そんじゃそこらのボロもどきとは格が違う。一歌達にはもっとボロ建物を研究してほしいものだ。
「にしても、まさか一歌が告白してくるなんて夢にも思わなかったな。夢じゃないよな?」
試しにほっぺたをつねってみた。とても痛かった。
「あっ、バイト先の人達や大学の友達から祝福のメッセージ届いてる。九条家どこまで根回ししてんだよ……」
◇一歌視点
「進展おめでとうございます。お嬢様」
「そうね。正式に恋人になることは叶わなかったけど、今は進展を喜ぶべきよね。使用人達も今回手伝ってくれてありがとう」
「ありがたきお言葉で御座います」
私たちは、幼馴染という関係から脱却した。無人島にいる時、朝陽くんはまだ彼女としてみてくれなかったけれど、意識してくれるだけ進歩した。
これからが勝負だ。
「作戦は第二ステージに入るわ。最終目標は朝陽くんが私に依存するようになること」
「お嬢様のためなら火の中、水の中、法だって犯しましょう」
「最大限努力します」
「仰せのままに」
「女性から手を出したら大抵の男はコロッと堕ちるのに……はよくっつけや」
拝啓、お爺様。私たち幼馴染以上恋人未満になったわ。正式に恋人関係になれるよう頑張るから、どうか影から見守っててちょうだい。
◇無人島編完