朝の鐘とも言える小鳥の鳴き声が、頭の奥深くに響いている。
「ううっ……頭がぐわんぐわんする……」
宅飲みの翌日、俺は強烈な二日酔いに襲われていた。
「昨日そんなに飲んだ……っけ。あっ、ああ……」
血の気が引くとはまさにこのことなのだろう。
昨日のことは鮮明に覚えている。俺は一歌に恋人になるって宣言をして……
「段階を追って恋人になるはずだったのに、段階すっとばしちゃった!」
居間にも台所にも一歌は居ない。
急いで一歌に電話をかけても、一向に出る気配は無かった。こうなれば九条家の屋敷にカチコミするしかないかと覚悟していると、風呂場からご機嫌な歌声が聞こえてくる。
「一歌!」
風呂場の扉を開けるとそこには、眩しいばかりに白く研ぎ澄まされた女体が居た。
「あっ、ああ……なんてエッチな身体してるんだ!」
「変っ態!」
このあと、一歌から強めの往復ビンタを思いっきり食らった。
◇
「さっきのは事故として、私たち正式に付き合うことになったわけじゃない」
「は、はい……」
両頬がまだジリジリしている。
「先に言っておくけど、あの時の恋人宣言は無しは無しだからね。約束を守らない人は嫌いよ」
「一歌が嘘が嫌いってのは幼馴染なんで、重々理解してるよ。不本意な形にはなってしまったけれど、俺と一歌は恋人ってことでいい」
「それと、私の身体を見られたのは、身内以外では貴方が初めてだから、責任とってほしいの」
「その前に服を着てくれないかなぁ!?」
彼女はバスタオル一枚の状態で、正座している俺を見下ろしている。どうしてこうなったのだろう。宅飲みで普通、こうはならないだろう。
「私の身体、エッチだと思う?」
なんてことを言い出すんだろうこの人は。
「エ、エッチだと思います……」
「そう。それが聞ければ満足だわ。朝陽くんが寝ている間にケーキ買っておいたから、恋人祝いに食べましょう!」
すっかり上機嫌になった彼女は、服を持って奥へと消えていった。
……危なかった。正直、もっと言い寄られてたら襲っていたかもしれない。