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使用人調査団

 昨晩、何者かが朝陽様のご自宅に侵入した件で、一歌お嬢様から命が降った。『朝陽くんの聖域を汚した犯人を見つけてちょうだい』と。


「リットン調査団もとい使用人調査団結成です」


「名前ダッサ」


「この穴から侵入したと見れますね」


「あの男はこう見えて顔立ちはいいからな。犯行動機は夜這いか?」


 朝陽様の情報提供によると、金銭は一切取られてなかったらしい。何が目的で入ったのだろうか?


「にしてもこの穴、綺麗すぎますね」


「ああ、よほど高性能なドリルじゃなきゃこんな穴にはできない。建築関係者だろうか?」


「家政婦長、証拠品のリンスを持ってきました!」


 む、このリンス。匂う。年間数百本しか販売されていない凄く貴重なリンス。


 これは重大な物的証拠です。


「君、すぐさま販売元に取引履歴を送らせなさい。重大な証拠になります」


「承りました」



        ◇



 しかしこれだけじゃ確信には至らない。決定的な証拠が欲しいところです。


「家政婦長、昆虫を採取しました!」


 むむ、この虫。ハエだ。種類はチョウバエ。系統的にはハエよりもユスリカやカなどに近い昆虫で、成虫の触角が3節だけのハエと異なり、チョウバエの成虫の触角は多数の節からなる。日本の家庭では主に排水溝、下水溝、浄化槽、冷蔵庫から発生する身近な虫です。


 このチョウバエも見過ごせない物的証拠になりえる。


「君、念の為このハエを研究施設に運びなさい。DNAから何か手がかりが接種できるかもしれません」


「うっせえ耄碌ジジイ。こんなハエに手がかりあるわけねえだろ」


 態度の悪い使用人はブツクサ文句を垂れながら、ハエが入ったカゴと共に研究所へ向かっていきました。



        ◇



 しかしまだ足りない。決定的証拠が無ければ犯人を見つけ出すことはできないでしょう。


「家政婦長、現場に残されていた指紋の特定に成功しました!」


「お手柄です。場合によっては重要な証拠ですよ。どれどれ……」


 まさか、その指紋は私たちのよく知る人物のものでした。

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