「犯人が分かりました。お嬢様に三日間の成果をお披露目します」
家政婦長がこの三日間でまとめた資料を一歌お嬢様に提出した。一歌お嬢様はイスに座ってコーヒーを嗜みながら出された資料に手を伸ばす。
「私の朝陽くんを脅かした害虫を見つけたのね。さすが使用人達は優秀ね!」
「お嬢様、ページをめくってください」
一歌お嬢様が資料を開いた途端、彼女の顔が一気に曇り始める。
無理もない。確か資料の一ページ目はチョウバエを超拡大したものだからだ。これを見た一歌お嬢様はひとしきり叫んだ後、ド派手に後ろへ飛び上がり転倒してしまった。
その際、コーヒーも空を舞ったが、間一髪。使用人の一人が受け止めて、床にこぼす惨事は免れた。
「風呂場に集っていたチョウバエからお嬢様の垢が発見されました」
一歌お嬢様が目の前で取り乱しても顔色変えずに淡々と事実を告げる家政婦長。流石である。
「さらにこのリンス。直近の購入者にお嬢様が含まれていました。今ならまだ許しますよ。自首しましょう」
これに対して一歌お嬢様は、目ん玉ガンギマリな笑顔で家政婦長に圧をかけた。そのまま数秒の沈黙の後、彼女が口を開く。
「下手な小細工はやめてほしいわ。誰よ、私を犯人に仕立て上げようとしてるのは。貴方、貴方なの? このリンスも大浴場から取って来たのかしら?」
下手な言い訳をつらつらと並べる一歌お嬢様。しかし家政婦長が次の資料を見せた瞬間、一歌お嬢様は顔面蒼白となった。
「この写真は、綺麗に片付けられてる朝陽様のお部屋でございます。そこから不自然な数のお嬢様の指紋を採取することに成功しました」
家政婦長が資料をぶちまけたあと、こんな一言をお嬢様へぶつけた。
「どういうことか、説明してもらおうじゃないですか」
◇んで
「残念です。判決、お嬢様を反省文10枚の罰に処します」
「いやよ! 反省文なんていや!」
「お嬢様。これは罰ですので。潔く諦めてください」
「だ、だれか助けて! 朝陽くん!」
「不法侵入の犯人がお嬢様だと、朝陽様に言わないだけありがたいと思ってほしいです」
こうして一歌お嬢様は家政婦長に引きずられながら反省部屋に入っていった。
「……普段は完璧令嬢なのに、どうして朝陽様が絡むとポンコツになるのでしょう?」