◇しりとり
「朝陽くん。『す』だけで責めてくるなんて。そんなに私に『好き』って言わせたいの?」
「散々『け』責めで『結婚しよう』と言わせたがる一歌には負けるよ」
「スフォルツァ家」
「ケーブル・アンド・ワイヤレス」
「ぐぬぬ……」
◇怒ってる理由
「一歌。俺がなんで怒ってるかわかるか?」
「貴方の声が聞きたすぎて電話をたくさんかけたことかしら? それとも現在進行形で身体に抱きついてるからかしら?」
「トイレ流してないからだよ。流せよ早く。異臭がこの部屋にまで漂って来てんだよ」
◇大学内にも九条家の手先が
キャンパスライフを謳歌中の俺は、紆余曲折あって九条一歌と付き合っている。
九条家は貴族の末裔で大金持ち。それ故に俺を監視しているのか、あちこちで九条家の息がかかった人を目にする。
とは言っても大抵は陰ながら見守ってるのが大半なのだが。唯一の例外があるとすれば……
「……家政婦長よね? キャンパス内で何をやっているの?」
「……私は本日配属された臨時教授です。決してお嬢様のご隠居様に命じられて来たわけではありません」
まさか家政婦長が、本当に臨時教授として大学の講義の教鞭を執る姿を見ることになるのは想像もつかなかった。
しかも内容は『一歌お嬢様がどんなに素晴らしいお方か』という私欲に塗れたものだった。
先日、佐藤食堂で『家政婦長の生き様を語ってみてはどうか』という内容を言ったはずだが、もしかして彼にとっては一歌に仕えることが生き様だったりするのだろうか?
ちなみに、一歌もその講義に参加していたのだが、終始顔を真っ赤にしてプルプル身体が震えていた。
正直、共感性羞恥的な面で可哀想だなって同情した。