「大学の講義疲れた~!」
しかも要らないレポートの課題付きで。
またレポートで苦戦を強いられるのかと憂鬱な気分でアパートに帰宅すると、なんだかいい匂いがする。
「朝陽くん、ちょうど夕ご飯出来たから食べましょう!」
一歌が夕ご飯を作っていた。
◇
「バイト疲れた~! もう掃除する気力もない」
そう呟きながら部屋に入ると、散らかっていたはずの服は取り込まれて、散らばっていた資料は元の場所に戻っていた。
「おかえりなさい朝陽くん! お部屋片付けておいたわよ!」
◇
「一歌、君さ。ここ最近毎日来てない?」
「えっ? 彼女だし当たり前じゃないの?」
薄々感じていたが、彼女は一般常識が欠落している傾向がある。普通、通い妻まがいなことしないし、こっちも求めてない。
「俺は大丈夫だから。一人でなんだって出来るし」
「掃除は出来ないじゃない」
「出来ないなりに頑張ってるつもりだよ。ロボット掃除機だって買ってるわけだし」
「このボロアパート、段差だらけだから段差の昇降ができないロボット掃除機とは相性悪いわよ。現に今だって突っかかってるし」
「えっ? マジっ?」
ロボット掃除機はなんのことない段差でつまずいて、動かなくなっていた。
「朝陽くんも私みたいに実家から通えばいいのに。どうしてここにこだわるのよ」
「……兄貴とは犬猿の仲だってのは君もよく知ってるだろ」
「そういえば、お義兄さんとは絶縁まではいってないけど、決別まではいってるのよね」
「うん。兄貴に至っては顔も見たくないぐらいには」
「そんな貴方にいい話があるわ。ちょうど九条家は分家、それもまだ幼い男子しか居ないから跡取りが空白状況なの」
「急にどうした?」
「だから私のお婿さんになって、九条家の一員にならない? お家柄だって、貴方は皇族の末裔なんだから申分無いはずよ!」
「喉から手が出そうな話だけど保留で。まだこれから別れるかもしれないし、まだ時期尚早だろ」
「別れるつもり微塵もないわよ? 絶対に逃さないわ! 例え海外に姿をくらましても絶対に見つけ出すわ!」
「愛が重いよぉ……」
九条一歌は愛が重たい。最近になって気づいたことの一つだ。