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第20話 最強ギザ歯彼女は食わせたいんですケド!

【来馬晶視点】


お昼。


お昼が来てしまった。


広場。


広場に来てしまった。


手作り弁当。


手作り弁当を出してしまった。



遊園地デートなら、手作り弁当でしょ。

とママが言い、


手作り弁当は好感度高い。

と莉奈さんが言い、


むしろ、手作り弁当期待してるんじゃない?

と莉緒さんが言い、


わかったわよ! つくればいいんでしょ! つくれば!

とアタシが言い、


「これもしかして手作り?」

と目の前の彼氏が言っている。


ああー、不安。

正直料理はママの手伝いくらいしかしてないし、

なんと言っても、小角は自分で弁当をつくる。

そして、うまい。

初めて食べた時の衝撃と言ったら……



『おい、小角、その卵焼きよこせ』

『ギザ歯ジャイ○ンがやってきたぞー!』

『心配すんな、劇場版ではいい人になるから』

『俺の日常に劇場版はねえよ』

『泣けるな』

『全俺がな』

『……うま!』

『どうした!? ゴルシ!』

『娘じゃねえよ。おい、シェフを呼べ』

『私ですが』

『は? お前の、手作り……?』

『ああ……妹にせがまれてな』

『マジか……』

『伊達に味っ子読んでねえぜ!』




あのときは、そのあと全部食べたな。

代わりに、ヤツが欲しがってたアニメコラボパンを全部やったからイーブンだろう。

なんなら土下座してたし。


というわけで、小角はほぼ毎日弁当を作ってて、しかも、うまい。

なので、いやだ。

絶対小角のほうがうまい。


小角が蓋をあける。

中身は、唐揚げ、オムライス、たこさんウィンナー、と茹で野菜。

ママが無理せず無難な唐揚げを提案、

莉緒さんがこれ作っとけば大体男はおちるとたこさんウィンナー、

莉奈さんはオムライス。卵がぐちゃぐちゃになるから無理だって言ったのにオムライス、

むしろ、ぐちゃぐちゃがいいんでしょうが!

と、熱弁された。


小角がオムライスを指して、「三女……」と泣いていた。

いや、あれほどぐちゃぐちゃじゃねーし。

というか、莉奈さんは、小角のこと分かりすぎじゃないだろうか。


なんてことを考えている内に、泣きながら小角が食べ始める。


感想気になってめっちゃ見てたらしい。小角に止められる。


「あ……うま」


美味しい? ほんとに?


「うん、うまい。めっちゃうまい」


よかった。よかったぁああああ。


ただ、余りにも、うまいうまい言うので、途中からはもう小角のほう見れなかった。


「あれ? 晶は?」


うえ! 名前!

じゃなくて、アタシは自分の弁当の味でヘコむのもヤだから、茹で野菜のサラダと、パンだけだった。


「あー、じゃあ、よければ」


小角がバッグから取り出したのは、お弁当。

開けると、パスタが2種類。

一応で作ったらしい。

うますぎる。

ずるすぎる。


拗ねたアタシを慰めるために小角が誉めまくり、アタシが折れて昼ごはんは終わった。



そして、小角が席をたつ。


「ちょっと……待ってて」


そして、小角が帰ってくる。

中学生くらいの娘さんを連れた夫婦。

なんかかわいいな、この子。知り合いか?


「あー……晶、ごめん。この人達、俺のおじさんおばさん、で、妹」


ふーん。


「えぇええええええええええ!?」

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