【来馬晶視点】
お昼。
お昼が来てしまった。
広場。
広場に来てしまった。
手作り弁当。
手作り弁当を出してしまった。
遊園地デートなら、手作り弁当でしょ。
とママが言い、
手作り弁当は好感度高い。
と莉奈さんが言い、
むしろ、手作り弁当期待してるんじゃない?
と莉緒さんが言い、
わかったわよ! つくればいいんでしょ! つくれば!
とアタシが言い、
「これもしかして手作り?」
と目の前の彼氏が言っている。
ああー、不安。
正直料理はママの手伝いくらいしかしてないし、
なんと言っても、小角は自分で弁当をつくる。
そして、うまい。
初めて食べた時の衝撃と言ったら……
『おい、小角、その卵焼きよこせ』
『ギザ歯ジャイ○ンがやってきたぞー!』
『心配すんな、劇場版ではいい人になるから』
『俺の日常に劇場版はねえよ』
『泣けるな』
『全俺がな』
『……うま!』
『どうした!? ゴルシ!』
『娘じゃねえよ。おい、シェフを呼べ』
『私ですが』
『は? お前の、手作り……?』
『ああ……妹にせがまれてな』
『マジか……』
『伊達に味っ子読んでねえぜ!』
あのときは、そのあと全部食べたな。
代わりに、ヤツが欲しがってたアニメコラボパンを全部やったからイーブンだろう。
なんなら土下座してたし。
というわけで、小角はほぼ毎日弁当を作ってて、しかも、うまい。
なので、いやだ。
絶対小角のほうがうまい。
小角が蓋をあける。
中身は、唐揚げ、オムライス、たこさんウィンナー、と茹で野菜。
ママが無理せず無難な唐揚げを提案、
莉緒さんがこれ作っとけば大体男はおちるとたこさんウィンナー、
莉奈さんはオムライス。卵がぐちゃぐちゃになるから無理だって言ったのにオムライス、
むしろ、ぐちゃぐちゃがいいんでしょうが!
と、熱弁された。
小角がオムライスを指して、「三女……」と泣いていた。
いや、あれほどぐちゃぐちゃじゃねーし。
というか、莉奈さんは、小角のこと分かりすぎじゃないだろうか。
なんてことを考えている内に、泣きながら小角が食べ始める。
感想気になってめっちゃ見てたらしい。小角に止められる。
「あ……うま」
美味しい? ほんとに?
「うん、うまい。めっちゃうまい」
よかった。よかったぁああああ。
ただ、余りにも、うまいうまい言うので、途中からはもう小角のほう見れなかった。
「あれ? 晶は?」
うえ! 名前!
じゃなくて、アタシは自分の弁当の味でヘコむのもヤだから、茹で野菜のサラダと、パンだけだった。
「あー、じゃあ、よければ」
小角がバッグから取り出したのは、お弁当。
開けると、パスタが2種類。
一応で作ったらしい。
うますぎる。
ずるすぎる。
拗ねたアタシを慰めるために小角が誉めまくり、アタシが折れて昼ごはんは終わった。
そして、小角が席をたつ。
「ちょっと……待ってて」
そして、小角が帰ってくる。
中学生くらいの娘さんを連れた夫婦。
なんかかわいいな、この子。知り合いか?
「あー……晶、ごめん。この人達、俺のおじさんおばさん、で、妹」
ふーん。
「えぇええええええええええ!?」