【来馬晶視点】
観覧車。
観覧車だ。
観覧車は遊園地のアトラクションだ。
観覧車は、で、デートの定番だ。
アタシたちはカップルだ。
つまり、付き合っているわけだ。
そんな二人が観覧車に乗ることに何の違和感もないわけだ。
ならば、何故アタシたちはただただ見上げてるんだ。
もうちょっとで日が沈み始める。
小角は妹ちゃんの都合であと少ししかいられない。
「よっしゃ、行くかオラア!」
アタシが気合いを入れる。
「お、おう! いったらあ! オラア!」
オラオラ言いながら、乗り込んでいく。
そして、
「……」
「……」
対角線で静まり返るアタシたち。
あー! 無理ー!
狭い個室じゃん!
逃げ場ない個室じゃん!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!
今、思えば、基本二人きりの時は、
学校の屋上か帰り道、朝のランニング。
個室で二人は、はじめて……
「え? どした?」
小角が聞いてくる。
「あ、いや……こういう狭いとこで二人は初めてだなあ、と」
「あ……うん」
……
いや、「あ……うん」じゃねーよ!
照れるなよ! こっちも照れるわ。
そうしてアタシたちは観覧車前半戦を完全なる膠着状態で終えた。