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第173話「音楽家を育てよう」

 タダシ達は、アンブロシア王国より居城である王城へと返ってきた。

 暗躍する反神の軍師とやらは気がかりなものの、通常業務はいつもどおりこなして行く必要があった。


 今日もタダシは、日課の畑の耕しや植林を終えて、王城へと返ってきて一息つくところであった。

 猫耳賢者シンクーが、内政についての会議をしたいというので、タダシ自らの手から来客に飲み物を作っている。


「お湯を沸騰させて、香辛料を入れてと……」


 お湯にカルダモン、シナモン、生姜、クローブ、黒こしょうを入れて煮る。

 豊富な香辛料が使えるようになったのは、タダシが大陸全土を支配したからこそだ。


 うん、いい感じに煮えてきた。

 そこに、紅茶を加えて更に煮る。


「そして、たっぷりのミルクと砂糖だったな。よし、こんなもんか」


 地球の様々な飲み物を再現しようとした帝国の皇帝は、様々なレシピを残してくれていた。

 これは、インドのマサラチャイという飲み物だ。


「さてと、一杯味見してみるか。なるほど、これは砂糖入れないと香辛料の味がキツイかもな」


 でも、身体が芯から温まるような感じがする。

 飲み物をカップに注いで、客席へと向かう。


 そして、客席で小さくなって座っている牛乳瓶の瓶底のような度の高い眼鏡をかけた小柄なコボルトに飲み物を出して声をかける。


「ウルブックくん、財務長官としての仕事の方は上手くいってるかな」

「あ、はぁ……」


 大陸中に流通させるためのタダシ王国の貨幣を作るという大プロジェクトを任されたウルブックが、何か言おうとしたその時。

 隣の吸血鬼の女が声を張り上げた。


「あははっ、タダシ様。私がサポートについてるんですから、安心してくださいよ。ねっ、ウルブック!」


 ドンッ! と、ぽっちゃりとした吸血鬼の女子に背中を叩かれて、ウルブックは大きくえづく。


「ゲホゲホッ!」


 タダシは呆れて言う。


「おいおい、アマミツ。ウルブックくんは繊細なんだから、手加減してやってくれよ」


 ウルブックの補佐官になったのは、吸血鬼族の女官の中でも優れた頭脳を持ったアマミツだ。

 もともと諜報チームでも司令塔を務めていたほどの逸材である。


 しかも、タダシの妻の一人となって子供も産んだことが知られているため、色んなところで顔が利く。


「ふはっ、この飲み物。ちょっと刺激強いけど、甘いお菓子とよく合いますねぇ!」


 パクパクお菓子を食べながら、マサラチャイを飲んでいるアマミツ。

 だいぶ砂糖入れたんだけど、それでも甘いお菓子にあうのかな。


 ウルブックが、ずり落ちたメガネを直して小さい声で言う。


「タダシ陛下。ご心配には及びません。アマミツ殿のおかげで、仕事はスムーズに行ってます」


 そのウルブックの声より三倍は大きい声で、「そうですよー!」とアマミツが声を合わせた。

 食べるかしゃべるか、どっちかにして欲しい。


「そうだといいんだけどな」


 タダシに、ウルブックがタダシの顔が刻印された金貨、銀貨を見せて細かい説明を始める。


「金貨、銀貨自体が宝石のように価値のあるものとして扱われてます。この国の民は新しい物が好きのようですから、みんな面白がって使ってくれています。まず、第一段階はクリアできたと言ってよいでしょう」


 まず、金貨、銀貨を流通させて、そこから貨幣価値を理解させて金本位制による兌換紙幣も徐々に普及させる。

 中央銀行を作り、国がきちんと価値を保証して、新通貨を流通させるのだ。


 そして、やがて大陸中にそれを広めていく。


「なるほど、まあこれくらい美しい貨幣なら、俺も一つ記念に欲しいかもしれない」


 自分の顔が掘ってある金貨なんて、ちょっと気恥ずかしい気もするが、手元にワンセット置いておきたくなる。

 偽造防止も兼ねているのだろうが、実に手の込んだ一品である。


 しかし、本来なら説明は大臣のウルブックがやるのではなく、補佐官のアマミツがやるんじゃないのか。


「アマミツ殿は、本当に役に立ってくれてます。この国の人口からなにから、データを集めて来てくれたのは彼女でした。各地での折衝についても、私一人ではこれほど手早い仕事はできなかったでしょう」


 なんか、アマミツのほうが大臣みたいにデンとかまえているように見せるんだが、まあそれで仕事が順調ならいいかと放って置くことにした。

 なんかあまりにも立場が弱そうだから、後でウルブックが一人の時にも大丈夫かは聞いておくかとタダシはひとりごちる。


 ふと横を見ると猫耳賢者シンクーが、辛かったのか猫舌で熱かったのか、たっぷりと砂糖を追加して入れたマサラチャイをゆっくり飲んでいる。


「ところでシンクー、反神の軍師とやらはどうなってる?」


 そろそろ、一ヶ月。

 また向こうが暗躍し始める頃ではないだろうか。


「向こうが手を伸ばしてくるのを、防諜ぼうちょうでなんとか事前に食い止めてるという感じニャ」

「そうか」


 割といつも戦闘的なシンクーにしては、静かな面持ちである。

 もっとこちらから、激しい策を出してくるんじゃないかと思ったが、暗闘が続いてるようだ。


「こちらも、いくつか罠を張ってるニャー。それに、相手が食いついてくれば……こんな感じは、久々ニャね」


 シンクーが言うには、釣り糸をいくつもたらして魚が食いついて来るのを待ってくる感じだという。


「そうか、そちらでいまできることはないようだな」


 タダシだって、懸念をいつまでも引き伸ばしたくない。

 自分ができることは、何でもしようとは言っている。


「タダシ陛下、今は焦らないことニャ。それより、敵に隙を見せないためにも大陸を安定させる内政面の施策を勧めたいニャ」


 そのことが、回り回って大陸を安定させることにつながり、敵の打つ手を減らすという。


「そんなものか。衣食住の問題は、とりあえずなんとかなったんだよな」

「あとは、民を満足させる娯楽ニャね」


「それなら、大工チームや工芸チームが、頑張ってくれているだろう」


 タダシは、自慢げに自分が座っている見事な大テーブルを撫でる。

 例えば、この会議室に使われている重厚な大テーブルも、魔木の平板を使ったものだ。


 磨けば磨くほど黒光りする。

 このひんやりとした硬質ガラスのようなテーブルの触り心地は、他の国のどこにもないものだ。


 このテーブルだけでなく、物造りが好きなタダシ直下の生産チームは、タダシ王国産の製品を大陸中に広めているところだ。

 とんでもない硬さを持ち、耐火性を誇る魔木を利用した家具や建設は珍しい物として、各地で好評である。


 あとは、みんながマサラチャイを飲んでいる白磁も、タダシ王国産だ。

 帝国や聖王国から学んで、陶器やガラス器の技術も先進国と肩を並べるほどに進歩した。


 タダシは落ち着いた陶器が好きなのだが、派手好きの貴族やお金持ちのために美しい切子ガラス工芸の技術も進めている。

 この国の新しい物品や建築様式は、一般的にはタダシ様式ようしきと呼ばれている。


 もともと、海エルフ達の文化でもあった自然と調和したスローライフな木材建築や庭園技術。

 そこにドワーフの素朴ながら重厚感があって味わいのある物造りに、魔族の新規性がやたら高いモダンで奇抜な嗜好が加わる。


 現代技術を知っているタダシの未来的な発案をもとに、これらが渾然一体こんぜんいったいとなって、新しい文化として花開いたのだ。

 まさに、東西の文化の融合。


 新しくて、どこか不思議な懐かしさもある。

 地球で言えばオリエンタルとも言うべき文化が、大陸が統一されたおかげで新しいスタンダードとして大陸中に広まりつつあった。


「あとは、オベロンが作った小型魔導球も進歩が著しい」


 そう言われて、マサラチャイに蒸留酒を入れて飲んでみているドワーフの名工オベロンが自慢気に頷く。


「タダシの故郷の言葉では、オール電化というんじゃったか。この王城に作ったシステムは、さしずめオール魔導化といったところか。とりあえず、モデルケースとして、王城をぜんぶ魔導化できたからの」


 オベロンが開発した、とんでもない新技術。

 熱エネルギーを魔力に変換し、そのまま導力へと変換する小型の魔導球。


 最初に使われたのは、魔導機関車の動力としてであったが、それを発電機のようにして、魔導力で王城すべての電灯を灯すところまで来ていた。

 もともと、魔力を使った電灯や水道ポンプ、冷蔵庫や、エアコンなどは帝国や聖王国で開発されていた。


 それを小型の魔導球から出た魔導力で、そのまま使うことによって、王城は瞬く間にオール魔導化できた。

 もちろん、このモデルはどこにでも輸出可能だ。


 オベロンは何気なく言っているが、魔導球には熱エネルギーを使うものの、現代日本の最新式の火力発電所の効率すら遥かに超えている。

 魔力というものは、火水風電どのような形にも変換できるため、ほぼ100%の効率で電力にもできる。


 しかも、魔導エネルギーを溜めておくバッテリーの役割も果たすのだ。

 これが、どれほど凄い技術なのかを本当の意味で理解できているのは、タダシだけだろう。


 まさに地球の科学すら超える、無限の可能性がある。

 いずれ市民生活は、更に豊かになっていくはずだ。


「今は試作の段階だが、これから量産も可能になるんだろう?」

「それも、王様達がたっぷり素材を集めてきてくれるからじゃな」


 タダシたちは、もはやこの大陸で敵なしだ。

 クルルに乗せてもらえば、どこにでもすぐ行けるので、ミスリル塊が必要だと言われれば、あっという間に倉庫いっぱいに掘ってこれる。


 新製品の開発は、Aを作るためにBの部品が必要になり、そのBを作るためにCの工具を作る必要がある。

 その過程は、まるでパズルゲームのようで楽しくて止まらないのだ。


 しかし、そんな付帯rを見てシンクーは小首をかしげている。


「うーん。今必要なのは、そういうんじゃないニャ」

「と、言うと?」


「生活が豊かになるのは良いニャけど、うちの国の文化はみんな物質的というか、なんかみんなやることが無骨ニャ」

「そう言われれば、そんな感じもする。うーん、まだ何か足りないものがあるか」


 物造りが楽しすぎて、それに偏っている嫌いはある。

 そう考えると、こうもっと違う芸術的な娯楽も必要か?


「もっとこう、精神的な豊かさも必要ニャ。例えば、音楽とかどうニャ?」


 そう、シンクーが言う。


「うちの王国で音楽というと、あれか?」


 タダシは、会議室の窓から、指を指して言う。

 王城の中庭で、大理石の噴水に腰掛けてギターをかきならしてから、さり気なく周りをチラチラして大きな声で歌い始める金帝竜エンタム。


「お前が~空を飛ぶなら~♪ 包み込む風になりたい~♪」


 青空に響く歌声。

 ちょっとセピア色の哀愁漂う甘いバラードで、曲調は悪くないのだが……。


「あれはダメニャ。歌詞が人間向けじゃないニャーね」

「だよなあ、俺達はまず空を飛ばんから、全く共感できない」


 本人は、リサイタルをやりたがってるが、人族どころか魔族もついていけないセンス。

 金帝竜エンタムの取り巻きの古竜には受けるのかもしれないが、もうちょっとこっちの感覚に寄せてほしいものだ。


「エンタムはあれで、楽器作りの才能も持っていてそちらは好評ニャ。とりあえず、そっちで協力して欲しいニャね」

「へー、あいつは相変わらず多芸なんだな」


 派手なだけの金髪ロッカーに見えて、見かけによらず繊細な仕事ができる。

 しかし、エンタムに楽器を作らせるというと、演奏者は別で確保するのか?


「実は、タダシ王国に音楽学校を作ろうと思ってるニャ。仕事が楽になったから、時間を持て余して音楽を学びたいという若者はいっぱいいるニャ」

「へえ。それは、いいアイデアじゃないか」


 ただ吟遊詩人を集めるだけではなく、王国で新しく育てるというのがシンクーの賢いところだ。

 今後生活が豊かになれば、音楽家の需要はうなぎのぼりだろう。


「王国最高の吟遊詩人グループを講師として呼び寄せてあるニャ。タダシ陛下に謁見して欲しいニャ」

「それは、喜んで会わせてもらうよ」


 主に街の広場や酒場で活躍する吟遊詩人は、皆の最大の娯楽である。

 タダシはこれまでいろいろ忙しくて、そういう文化には触れてこなかった。


 ちょっとワクワクする。


「それでは、セイレーンの吟遊詩人グループ。セイレーン・エコーズの五人を紹介しますニャ」


 カラフルな髪色の五人が登場した。

 それぞれ異なった楽器を持ち、統一感のある蒼を基調としたスタイルの良い肢体のラインを強調するようなドレスっぽいユニフォームを着ている。


 ボーカルらしきマイクを持っているのがリーダーだろうか。

 転生者魔王がいるせいか、魔族の服装デザインは結構現代的であることが多い。


 それにしても、セイレーン・エコーズの衣装は、まるでアイドルグループのようだ。

 ふわりとしたスカートもタイトで、健康的な太ももが眩しい。


 みんな羽が生えている以外は、人間とあまり変わりはない。

 タダシも、音楽が得意な種族であるセイレーンならちょっと見かけたことはある。


「なあ、シンクー。セイレーンって、人魚みたいな種族じゃなかったっけ?」


 確か、タダシが見たセイレーンはそんな感じだった。

 何やら、海で歌を歌って船人を惑わすとかそんな感じの魔族だったはず。


「ああ、セイレーンには陸型と海型がいるニャ。旅をしながら吟遊詩人やってるのは基本陸セイレーンで、なんといったらいいか、つまり山エルフと海エルフの違いみたいなもんニャ」


 そう言われると、なるほどと納得するしかない。

 この世界に来た時、海に住むエルフというこれまでにないイメージの人種を見せられて、タダシも困惑したものだ。


 海エルフがいるんだから、逆に陸に住む羽の生えたセイレーンがいてもおかしくないということか。

 真紅の羽と長い髪をしている、ボーカルのセイレーンが一人前に進み出て言った。


「あ、あのセイレーン・エコーズのリーダーのアリオンといいます。タダシ陛下に会えて、光栄です」


 微妙にこわばった笑顔で、タダシに握手を求めるリーダーのアリオン。

 なぜか、アリオラは握手する手が震えている。


 緊張しているのだろうか。

 それを、察したようにシンクーが声をかけた。


「このセイレーン・エコーズは、ちまたで凄い人気ニャ! 前から名の通った吟遊詩人だったニャが、ふらりと立ち寄ったタダシ王国でこのアリオンが大ヒット曲を作って、今では大陸中のステージから引っ張りだこニャよ」

「へー、そんな凄い人なのか。うちの民を楽しませてくれて、感謝するよ」


 タダシが笑って答えると。


「ぷふぉ」


 突然、アリオラの隣の緑の羽と髪の女性が吹き出した。


「ちょっと、セレナ、タダシ陛下の前よ! 下手したら打首ものよ!」


 アリオラは、真っ青な顔で慌ててたしなめる。


「ごめっ……だって本物の、ぷっ、くっ……」


 セレナと呼ばれる緑のセイレーンは、なにやら含み笑いが止まらないようだ。

 タダシは、やんわりと手を振って答える。


「あーあれだよね。なんか緊張すると、笑い出しちゃう人っているよね。大丈夫だから」


 どうやらみんな、少し緊張している様子だった。

 タダシとしては偉ぶっているつもりはまったくないのだが、今や大陸を治める大王なんて扱いをされているので、こういうこともあるだろう。


 セイレーン・エコーズの面々は、不安そうにシンクーの方を眺める。

 シンクーは、苦笑いで言う。


「もう良いニャ。さっさと、曲をやっちゃうニャ」


 そう聞いて、タダシは席に座って拍手する。


「おお、噂のヒット曲を聞かせてくれるのか、それは楽しみだな」

「ぷふぉっ!」


 今度は、シンクーが吹き出した。


「えっ?」


 何だその反応。

 さすがに、タダシはちょっと不穏なものを感じる。


「な、なんでもないニャ。ほら、セイレーン・エコーズのみんな、ステージの時間ニャよ」


 ジャーン、ジャジャンジャーン!


 カーテンの裏側から、さっきまで下の噴水のところで歌っていた金帝竜エンタムが登場する。

 タダシは、お前が引くんかーいと思わず突っ込みそうになったが、シンクーが隣で耳打ちする。


「セイレーン・エコーズのお披露目の話をどこで聴き込んできたのか、伴奏を手伝わせろとうるさかったニャ。実は、今回のセイレーン・エコーズの楽器や新衣装も、エンタムが新しく作ったニャ」


 どうやら、最初から打ち合わせ済みだったらしい。


「エンタムは、音楽絡みになるとほんとに張り切るなあ」


 さまになったギターソロで金帝竜エンタムが、ジャンジャン伴奏する。

 最初はお前が歌うんかーいと思ったが、さすがにそんなことはなく後ろの方で引いてるだけらしい。


 でも、どうしても音楽の話なら絡みたいのがコイツなんだろうなと、タダシは微笑ましく思う。

 人間向けでない歌詞以外は、金帝竜エンタムの実力は確かだし、伴奏だってうまいものだ。


 どうやら曲は勇壮な英雄譚らしく、吟遊詩人アイドルグループのイメージよりハードな曲調だった。

 フルートや、ハープをリズミカルにかきならす左右のセイレーンたちに目配せしてから、ボーカルのアリオンが、澄んだ声で静かに語りだす。


「戦乱の打ち続く悲しみの時代。無人の辺獄に現れた一人の農家。その名は、タダシ。彼の英雄譚は、こうして語られる……」


 俺の曲だったかと、タダシはびっくりする。

 自分の英雄譚を聞かされるなんて、なんだか気恥ずかしい。


「彼は農業神クロノスの大いなる加護と、並外れた精力と天性の性技を持っていた」


 ……ん、なんかセリフがおかしいぞ? 聞き間違いか?


「戦場を駆け抜け、勇猛果敢に敵をなぎ倒し、国々を従えていく生産王タダシ。しかし、彼の真の武勇は、戦場を離れた後に発揮される」


 おいおい。

 農業要素どこいったんだよ。


「夜の生産王の噂は、大陸中の女に広まった。『百人の妻を持ち、夜ごと彼女らを満足させる男!』、世界を股にかけるその伝説は女達の心を震わせて、夜の生産王のもとに、大陸中から多くの女達が集った」


 これ、もう英雄譚でもなんでもないだろ!


「夜の生産王タダシは、あまたの女達を愛し、女達から愛された。彼の精力は尽きることがない無限の泉であり、百人の妻を満足させるだけでなく、大陸中の女達の心までも虜にしたという」


 九割以上、夜の話しかない!

 これ、もしかして……というか、もしかしなくても。


「聞いて下さい……夜の生産王タダシの英雄譚!」


 タダシは椅子から立ち上がって叫んだ。


 夜の生産王の噂の出どころは、お前らの歌かぁああああああああああああ!

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