「シズネさん、もきゅ子が本当にこの世界の魔王様だって言うのかよ!?」
「あっ、はいそうですよー。っていうか、旦那様は何を今更驚いていらっしゃるのですかね? 私、始めに魔王を呼び寄せると言ったはずですが……」
俺の問いに対しシズネさんは、とても不思議そうに首を傾げながら、「お前、頭大丈夫なのか?」っと心配してくれていた。
ま、どちらかといえば、シズネさんには顔を
「いやいやいや、それってあの黒い巨大なドラゴンことジズさんの事じゃなかったのかよ!? だってあの
俺はややツンデレモードのツンになりながらも、シズネさんに対しそんな抗議してしまうのだった。
「えっ? だってもきゅ子はジズの頭の上に乗っていましたよね? なら、誰がどう見ても立場上でしょうが(笑)」
「ぐっぬぬぬっ……」
シズネさんに正論で論破されてしまい、俺はぐうの音しかセリフを口にできずにいた。
(確かにシズネさんの言うとおり、な~んかもきゅ子がジズさんの頭の上に乗ってるのが違和感を感じたし、それにジズさんが喋る前は必ずもきゅ子が「もきゅもきゅ」って鳴いてたよな? なら、ジズさんは魔王様であるもきゅ子の通訳していたのかもしれない。それに何より「姫さん」って呼んでいた。もしかしてアレらすべての事柄がもきゅ子魔王説の伏線だって言うのかよ……)
俺は今更ながらにとんでもない物語のモブキャラになってしまったと、気付いてしまったのだが、それも時既に遅しである。
だがしかし、
「それで、もきゅ子が魔王さ……」
「なんだと……その赤くて可愛らしいドラゴンが、魔王様だと? それではソイツは……わ、私が倒そうとしている、憎き敵方の大将ではないのかっ!!」
「もきゅ!」
アマネももきゅ子も俺の少ないながらのセリフを途中ですっ飛ばした挙句、アマネはもきゅ子を改めて敵方のボス認識し、またもきゅ子も何故か嬉しそうに右手を挙げて「そだよー♪」と元気に鳴くことで返事をしていた。
(状況理解してんのかよ、もきゅ子? お前、今勇者の目の前にいやがるんだぞ。このままじゃお前は……お前はっ!!)
そんな俺の心の声に呼応するように、アマネが一歩前に出ると、未だ俺の右足にしがみ付いているもきゅ子目掛け、勇者らしく名乗り上げようとしていた。
「あいやっ、ここであったがぁ~、
ビィ~ン。突如として謎の歌舞伎揚げチックを見せたアマネは、右手に持っていた剣を床にぶっ刺すと、左手を開いて後ろへと引き、そして右手も開きながら前へと突き出した。そして頭をグルングルンっと激しく回しながら、その赤く長い髪を
「きゅっ!? き、きゅ? きゅ~きゅ~っ♪」
もきゅ子も一瞬「一体何事が始まったのっ!? こ、これって歌舞伎だよね? わぁ~、こんな間近で見るのは初めてかも~♪」っと、やや驚いた表情をしていたのだが、アマネに敵対心が無いと判ると、されるがまま抱きしめられて、嬉しそうに鳴いている。
(……何でアマネのヤツは歌舞伎役者っぽい感じで叫びながら、もきゅ子抱きしめてやがるんだよ? 憎き敵のボスじゃなかったのか? そしてお前、可愛らしいの大好きなのか? いやまぁ、その気持ち俺も分かるけどさ。で、しかもそこは
俺以外の登場人物が全員ボケ役ばかりで、もはやツッコミが追いつかないほどである。むしろ俺自身もそのボケに乗り、迎合してしまいそうになっていたのだ。
そしてアマネに至っては、何故だか
「ぽかーん」
(何気にアマネのヤツ、自分で足をバンバン鳴らしつつも、一応セリフとして
セリフと心の声を同時に表示できない仕様のモブの俺は、アホな子のようにお口の中が乾くのも厭わず、あんぐりっと開け放ったまま、アマネともきゅ子の様子をただ黙って見ていることしかできなかったのだった……。
毎日お口の中のケアを怠らず、お話は第20話……。
「あっ、それで私も一応この世界では『元魔王様』なんかをやっておりました。ですが、なんか飽きたので後任として『魔王の座』をもきゅ子に譲り渡し、今ではこのレストランのオーナー兼ダンジョンの管理人などもしております。あとこの隣にいる男の人とも、なんとなく
(シズネさん、まさにこの話が閉じようってその時に、何でしれっとセリフ入れてまだ物語続けようとしてやがんだ? アンタそこまで自由人なのかよ? それに俺達の仮初め話をペラペラ喋るんじゃねぇよ……。あと最後の溜め息が余計、俺の
シズネさんは既に終わりの次回予告が表示されているにも関わらず、まだ喋りたいのかそんな風に自分の役割などを説明し、最後には俺をディスりにかかっていたのだった……。
心のゆとり教育に疑問を呈しつつ、次話あたりからいよいよ物語が進むはず! などといつもの詐欺表記を露呈しながら、お話は第20話へつづく