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第21話

「あっはっはっは~、あっそれそれ、そぉ~れぇ~♪」

「きゅ~っ♪」


 まるで親子が日曜日の公園で、その休日ライフを満喫しているかの如く、アマネともきゅ子はその場で180度回転のクイックターンを決めながら、喜び狂い、そしてそのままバターでも作るかの勢いで踊っていた。


「あらあら、これはなにやら楽しそうですね~。もしかしてぶっ壊れたメリーゴーランドの真似でしょうかね~♪」

「…………」

(何だよ、その的を射た表現は? いや、まぁ言い得て妙ではあるけどさ。それにしたって……)


 俺はそれ以上心の声で表現することができず、ただ押し黙り目の前で繰り広げられている輪舞曲ロンドを文字描写に変換して、文字数稼ぎすることにつとめることにした。


 だがしかし、そんな遊びも現実ではそう長くは続かなかった。


「あっはっは~……うっぷ」

「もきゅ~っ……ぶっふぅ」

「あ、アマネ? も、もきゅ子?」


 アマネももきゅ子も無理して回転しすぎたため、気分でも悪くなってしまったのか、ピタリっと回るのを止めると、口元を両手で押さえ互いに床へと両膝を着いていた。


「おいおい……ほんと大丈夫なのかよ、お前らっ!?」


 俺はさすがに女の子が決して他人ひとに見せてはいけない姿を目の当たりにするのは、御免被ごめんこうむりたいとの思いから、そんな心配の声をかけてしまう。


「「(ふるふる)」」 


 だがそんな俺の心配を他所に、今すぐにでもヒロイン達によるダムの放水作業エデンの解放が行われようとしているのかもしれない。


「あっちなみに言っときますけど、お二人共ウチの床汚したら……(ビッ!)コ、レ……ですからね♪」

「「(ぶんぶん、ぶんぶん)」」


 だがウチの妻、シズネさんはそれでも無情かつ無慈悲だった。

 右手の親指を巧み使い、少しだけ顎を上げると嫌味な表情をしながら、自らの首を真横に斬る動作で気分の悪い二人をとても心配していたのだ。


「(こわ~っ。シズネさんって本物ほんまもん893ヤクザよりも怖すぎるてばっ!!)」


 俺は今更ながらにとんでもない女性ひとを妻に迎えてしまったと思い、改めてシズネさんだけには逆らわないと心に誓ってしまう。


「さてっと、そろそろレストランの中を案内するとしましょうかね。さ、そこの役立たずの勇者様、行きますよ。貴女のお部屋も案内しないといけませんし……」

「(こくこく)」


 そう言ってシズネさんは床とお友達となり、声が出ず首振り人形のように頷いているアマネの右腕を取ると強引に立たせると……ゴン! いや、面倒になったのか、はたまた思いの外アマネの体重が重かったのか、そのまま持っていた右腕をパッと離しやがった。


「へぶっ!? か、顔が痛いぞ……むぅ~っ」


 アマネは顔面を床に打ちつけ、とてもヒロインとは思えないような声を発して痛がっている。あと少しだけ頬を膨らませ、子供っぽく怒ってる姿がちょっと可愛いらしい。


「あら、すみません……ついつい、ね(ニヤソ♪)」

「(やっぱりワザなのとかよ……)」


 シズネさんの成せる業とも言うべきか、悪魔的微笑みデビルスマイルを浮かべながらニヤニヤと嘲笑あざわらっていた。


「(何気にニヤではなく、ニヤなのが何ともシズネさんらしいよな……)」


 そんな俺を尻目にシズネさんは、痛がり顔を擦るアマネに店の中を案内していく。

 ついでと言っては何なのだが、夫なのにレストラン以外の内情を知らない俺も同行することになった。


「それではまず、ウチの店の要であるこの『レストラン』です。ここではナポリタンなどの『料理』はもちろんのこと『BARバー』も兼ねており、お酒などの飲み物も提供することになります」

「料理……か。うぷっ」


 シズネさんは玄関を入ってすぐにあるレストラン部門を案内していく。アマネはまだ気分が悪いのか、料理と聞いただけで何か新しい料理を技術的革新リバースエンジニアリングして提供する姿勢をみせていた。


「うん。まぁこの辺りは常識だよね。実際、俺も何度もこの店で食事してるし……」

(まぁ料理がナポリタン一色なのは、今も意味分からねぇけど……ってか、俺がほんとに料理というかコックになるのかよ……)


 俺はシズネさんの言葉に相槌を打つように、通い慣れた店であるこのレストランの話を聞いていく。


「ま、お酒と言っても樽にあるエールをジョッキに注いだり、またはこちらのカウンター部門の棚に並んでいる瓶をそのまま提供する感じですね。ぶっちゃけ三人ではとても人手が足りません回していけないので、その提供スタイルが主になります」


 シズネさんは自慢気にするように、自らの店を次々と案内していった。



 そろそろ真面目に物語を構築しつつ、お話は第21話へつづく


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