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魔法少女クビになったけど異世界ではムチムチが正義でした ~フリフリ衣装がはち切れそうでも、女神扱いされてます~
魔法少女クビになったけど異世界ではムチムチが正義でした ~フリフリ衣装がはち切れそうでも、女神扱いされてます~
ユンティア
異世界恋愛ロマファン
2025年05月28日
公開日
6,502字
連載中
「戦力外通告です。理由は……太りすぎですね」 そんな理由で魔法少女をクビになったリリカ・ハート。 変身衣装はパツパツ、スカートのフリルは限界寸前。 自己嫌悪とポテチまみれの夜を過ごした翌朝―― 目覚めたら、なぜか異世界!? しかも……その“ムチムチボディ”が大絶賛されてる!? 「太ももに神性……?」 「その腹、まさに祝福……!」 「鼻血出てますけどおおお!!?」 魔力暴走で衣装が弾け、村人からは“女神”扱い。 ぽよぽよマスコット・コモリと共に、 異世界でまさかの“崇拝ライフ”が始まる!? 【太ってクビ→転移→ムチムチが神扱い】 コメディ全振り×ちょっぴり胸きゅんな異世界成長譚。 こちらはリリカ編。他のメンバーもそれぞれ別世界に転生等するシリーズものです。

序章 魔法少女、ぷにぷに異常アラート

 街が、夜に沈み始めた頃。

 魔法少女・リリカは、少し汗ばんだ額をぬぐいながら、高層ビルの屋上に立っていた。

 「……ったく、呼び出し遅いっての……どこよ、敵……」

 その時、空気がひんやりと震えた。

 反応するように、契約リングが警告音を鳴らす。


 そして――現れた。


 「よっ、ピンクの太もも戦士ちゃん。今日もぷにっとご出勤?」


 軽口とともにビルの影から現れたのは、金髪巻き毛の無邪気な少年。

 十五歳くらいに見えるその少年――シュガー=スヴェンは、にやりと笑っていた。


 「来たわね、ヴォイドサンクチュアリの戦闘官……!」


 「えー、“特例戦闘官”のシュガーね。ボク、ちょっと格上なんだよ?ぷにぷにちゃん」


 「ぷにぷに言うなぁぁ!!てかその名前、公式なの!? 自称じゃなくて!?」


 リリカが叫びながら魔力弾を放つ。

 シュガーはそれを重力反転フィールドでいなすように受け流す。


 「でもほんと、よく肥えたよねぇ……“ぷにチャージ”でもしてたの?」


 「違うし!? 好きで太ったわけじゃないし!!毎晩の出動、連戦、睡眠不足、ストレス地獄の中で、夜中にチョコとかシュークリームとか食べなきゃやってらんなかっただけ!!“笑顔で市民を守れ”とか言いながら、毎晩魔物と戦ってたんだよ!?で、気づけば……こうなってたっていうか……!」


 怒鳴りながらリリカはビーム系魔法を連射。

 対するシュガーは瞬間転移でひらりとかわしながら、ひょいと肩をすくめた。


 「ふーん。ストレス食いで増量ねぇ……それでいてこの火力、やっぱ面白いなぁ。やっぱリリカちゃんの魔力、“波長”がズレてていい感じなんだよねぇ……」


 「《ルミナスブラスター》!!」


 炸裂する光線。その向こうでシュガーがくるりと宙返りしながら軽口を叩く。


 「ひゅー、今のちょっと焦ったよ? リリカちゃん、やっぱ波長いいねー!」


 リリカが歯ぎしりしたその時、指にはめた契約リングがピコンと光った。


 《……あー、はいはい、こっちでーす。ボクボク、コモリでーす》


 「なっ……なんで今!? 戦闘中なんだけど!?」


 《いや、通報信号きたからさ、一応見てるだけ見てるんだけど……うん、現場こわ〜い。行かなくてよくない?》


 「よくないに決まってんでしょ!? てかあんた、今どこでなにしてんのよ!」


 《えーっとね、基地の冷蔵庫前。プリンとゼリーで迷ってて、戦況モニター見ながら“腹の神託”と相談中》


 「バカかあああああ!!」


 《だって今のボク、“高蓄積状態”だしー? 無理して動いたら反動で腹が揺れて吹っ飛ぶしー?》


 リリカはビームをかわしながら叫んだ。


 「あんた、絶対今“ぽよぽよモード”でサボってるだけだろおおおお!!」


 《正解☆っていうかさ、リリカもさぁ、今こそ“ぽよ革命”のときだよ?》


 「後で根性焼きな!? 魔力で!!」


 そのやり取りの間にも、シュガーはポケットから小さな装置を取り出していた。

 星型のアンテナが光り、小さく唸りを上げている。


 「なにそれ……新手の武器?」


 「え?あー、うん。まあ……研究中の“おもちゃ”かなー。“フェイズノイズ・キャンディ”って言ってさ」


 「名前軽っ!!戦闘中にいじるもんじゃないでしょ、それ!!」


 「えー、いいじゃん。ちょっとリリカちゃんのデータ取ってただけだし~。君の魔力、なんか面白い動きするからさぁ……こう、響くっていうか……」


 ふと、戦いが中断される。

 両者、息を整えるように距離を取る中、シュガーはひょいと肩をすくめて笑った。


 「ま、今日はこれくらいにしとくか。そろそろ“後が怖い”しねー」


 「……は?」


 「組織の上がうるさいのよ、“あんま本気出すな”って。“ボクがあの子の波長、取りすぎるとズレる”んだってさー」


 リリカには意味がわからなかった。


 (あの子の波長……?ズレる……?)


 「またね、伝説のぷに魔女ちゃん♪」


 「うるさーーーい!!!」


 リリカが最後の光弾を放つも、彼はふっと消えた。

 その余波だけが、ビルの縁を崩し、風がざわめいた。


 気がつくと、彼のいた場所にだけ、不穏な波動が、わずかに残っていた――




***




(あれが……私にとって、最後の出撃だった)




 数日後。

 魔法少女リリカ・ハートは、運営から呼び出され、戦力外通告を受けた。


 理由は――太ったから。

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