目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
膳の祠
膳の祠
高橋志歩
ホラーホラーコレクション
2025年05月28日
公開日
1.3万字
完結済
――姉さん、私は無事に石並村に引っ越してきました。 山奥にある石並村の古い一軒家に引っ越してきた朱美。その妹を心配する姉。 朱美のメールで綴られる、村での穏やかな日々。 けれど、庭の奥で古びた祠を見つけてから、妙な現象が起こり始める。 朝晩必ず家の前を通る、自転車に乗った郵便配達員。 深夜に響く、誰かが箸で茶碗を叩く音。 朱美は何者かに取り囲まれ、日常が徐々に崩壊していく……。 ※本作品には不快な内容が含まれている可能性があります。 (この物語は創作です。登場する人物、団体、場所、出来事はすべて作者の妄想による架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません)

1:石並村の朱美からのメール

報告。

姉さん、私は無事に石並村に引っ越してきました。心配しなくてもちゃんと鍵は開けられたよ!


でも本当に引っ越しは面倒だった!何とかノートPCだけは荷物から引っ張り出したよ。ネットに接続できて良かった。田舎だから、光じゃないけど仕方ないねー。まあ姉さんにメールを書くぐらいしか使わないからいいか。当分はなるべくネット絶ちをして、田舎暮らしを満喫するつもりだし。通販も控えないと。スマホの電波は立つけど、こっちは緊急用だね。スマホの電話嫌いだから、姉さんもメール以外の連絡は固定電話の方によろしく。


しかし広い家だよ。6畳とかの部屋が5つだもんね。玄関も廊下も暗いし。こんな広いとこにひとりで暮らしてたお祖母ちゃんは凄いね。怖くなかったのかな。私としては、思い切り画材を広げられるから嬉しいけど、掃除が大変だなあと今から憂鬱だよ。でっかい掃除機を新調しようかな。雨戸は全部閉めてあるから、明日は朝から開けて空気のいれかえだ。縁側ってカーテンとかいらないよね?庭は広いんだけど、もう雑草ぼうぼうでジャングルだよ。虫が嫌だから、頑張って草むしりして除草剤をまかないとだなあ。


夜は静かで怖いなあ。ここは石並村でも割と中心で、昼間はけっこう人通りはあるんだけど夜は真っ暗で怖いよ。でも田舎の人は平気みたいで、さっき前の道路を自転車が走る音と笑い声がして、びっくりした。ああ、私も自転車を買った方がいいね。買い物に行くのに必須だろうね。

明日から、村の中を見回ってどういうお店があるのかとか、役所にも行かないと。コンビニが無いのは痛い!バスに乗って隣町まで行かないとコンビニが無いんだよ。うー。


やっぱりテレビを買おうかな。賑やかな音がしないとやっぱり怖い。

そうだ、台所の食器棚に食器がたくさんあった。。やたらと立派な茶碗や湯呑がぎっしりで使ってなかったみたい。お祖母ちゃん、食器集めが趣味だったのかな。気に入ったのは使うけど、残りはしまっておくから姉さんがこっちに来た時に良かったら持って帰って。


あーそろそろ眠い(=_=) 今夜は電気をつけて寝ます。電気代が心配だから早く慣れないとな。でもネットで見た幽霊屋敷潜入動画とかを思い出しちゃうよ。つくづく仏壇の無い家で良かった。あったらめちゃくちゃ怖かったと思う。


怖いばっかり書いてるけどさー本当に怖いんだよ!姉さんが来るのが楽しみ。でも来たら絶対に庭の雑草むしりは手伝ってよねー。じゃね。

<朱美>

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?