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第21話

「それだけ、私のことが好きってことなのかな?」

「は、はーい!?」


 なんで俺は、その聖修の言葉だけをまともに聞き取ってしまったんだろう。


 いやいや、「好き」と言っても、“ラブ”と“ライク”は違う。

 きっと俺が過剰に反応しすぎただけだ。


 ……と、ひとりで納得している俺。


 冷静さを取り戻そうと、深呼吸する。


「聖修のこと好きじゃなかったら、ファンなんてやってないですよ……」


 どうにか聖修の顔を見られるようになった俺だけど、多分、今の表情は引きつった苦笑いだと思う。


 でも、聖修はそんな俺を気にする様子もなく、会話を続けてくれた。


「確かにそうだよね。でも、“好き”って、“ライク”と“ラブ”、二つの意味があるじゃない? 神楽さんは、どっちの意味で私のこと好きなのかなって思ってさ」


 ……うわぁー!! 直球で来たーー!!


 心の中で、全力で叫ぶ俺。


 心臓がバクバクしているのが、自分でもわかる。


 ……うんうん。


 とりあえず、ひとりで納得しようとする俺。


 ……まぁ、さすがに……俺だって、聖修のことは“ラブ”じゃなくて“ライク”だよな? うん、たぶん……。


 いや、でも違うのかもしれない。

 よく考えたら、妄想の中で聖修を“オカズ”にしてる時点で……それって“ラブ”なのでは……?


 だって、“ラブ”だからこそ、そうなってしまうんだろ? “ライク”だったら、普通、そんなことにはならないよな……。


 でも、本人を目の前にして「ラブ」なんて言えるわけがない。


 ……よし!


 と、自分に気合を入れて、半分は力強く、


「もちろん、ライクの方ですよ……」


 とりあえず、半分苦笑い、半分笑顔で答える俺。

 まぁ、それでオッケーってことにしておこう。


「ライクか……」


 って、なぜか聖修が少し残念そうに呟く。


 ……え? あ? ん? なにそれ?

 なんで聖修はそんな残念そうな顔をするんだ……?


 そのあたりが、俺にはよく分からない。


「じゃあ、昨日は?」


「はい!?」


 ……昨日って、何のこと!?


 完全に「???」状態の俺。しばらく考えていたけど、次に聖修が言ったことで、段々と思い出してきた。


「昨日、私と会ってから、一人で部屋でシてたんでしょ?」


 ……あーーっ! って、そのことかい!


 まぁ、男ですから、そういうことはありますけど?


 って、今はそういう問題じゃない……のか?


「あ、だから……それは……普通に一人で、してただけで……」


 視線を逸らしながら言ってる時点で、嘘なんてバレバレなんだろうけど……。


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