……あ、でも……もういいか……こうやって、聖修と恋人同士になれたんだし、こういう関係にもなれたんだし……もう、何も言うことはないかな? だって、俺の人生って本当に平凡過ぎてつまらないって思っていたけど、聖修が隣に引っ越してきて、聖修と恋人同士になれて少しは毎日が楽しい日々になりそうだしな……。あ、でも、有名人の恋人って色々と大変そうなのかな? だって、ファンの子に聖修がキャーキャーって言われてたら俺が嫉妬しそうだし、毎日会えるっていう訳でも無さそうだし、聖修の場合、アイドルだから全国ツアーでいない事の方が多いんだし……そうなってくると遠距離恋愛と変わらなくなってくるのかも……。
俺はそう思いながらも、こうなったらこういう時こそ甘えてみようと思ったのか、仰向けになって少し恥ずかしかったけど、
「聖修……来て……」
と聖修のことを呼んから聖修の首へと腕を回す。
もうどうせなら、このまま少女漫画漫画の主人公になってしまえと思った俺は、無意識に聖修の名前を呼んでいたようだ。
……あ、少女漫画ではないか……だって、こういうことしてるんだから……。じゃあ、なんて言ったらいいのかな? そこのところは分からないけど少女チック、乙女チックっていうのかな? もう、俺はそんな主人公達の気分だから、それならそれでいいと思ったようだ。寧ろ、少女漫画の主人公の気分になった感じでいた方が楽しい気分になるんであろう。それなら少女漫画の主人公になった気分になって、もっともっと恋人に甘えてみたい、恋人らしいことをしたい。そして胸をドキドキさせてみたい。それでいいだろ? だって恋をするって、そういう事なんだからさ。今までは聖修は有名人だから雲の上の人と思っていたからセーブ出来ていたのかもしれないけど、今はもう自分の恋人なんだからセーブしなくてもいいのだから。
そう自分自身に言い聞かせる。
そしたら自然と聖修の事を見つめる事が出来た。そしてそれを言葉にする事が出来たようだ。
「俺も……聖修のことが本当に好きだったから……だから、ライブだって、聖修に会いに行っていたようなもんだからさ……。周りにいた女の子達からは白い目で見られていたけど、だけど、俺はそんなことは関係なくて、本当に聖修だけの為に周りなんて気にしないでライブに行ってた位好きなんだからな!」
「ありがとう……。私だけが尚のこと好きだって思っていたけど。それだと、本当に尚は私のことが好きだったみたいだね……それはそれで本当に嬉しいよ……。これで、尚とは本当の恋人同士になれたのかな?」
その言葉に俺は大きく頷く。
俺も本当に好きな人と恋人同士になれたんだから本当に嬉しい。そういう意味で大きく頷いたのもある。今まで聖修の事を想ってただけの日々は終わった。今度からは両想いの日々が続くんだ。そして恋人という時間を作る日々も続く事になるだろう。
「尚……」
あの聖修の高くて色っぽい声で自分の名前呼ばれて、本当に俺は今にもとろけそうになっていた。
……聖修の声って、本当にヤバいっ……って……。