「もう、大丈夫だから……」
「何が……?」
そう聖修は不思議そうな表情で俺のことを見つめてくる。
それが本当なのか嘘なのかは今はどうでもいい。好きだから聖修の性格を全部を受け止めるつもりだから。
「だから、聖修のを俺の中に挿れていいってことなんだけど……」
「あ! そういうことね! 尚……言葉って大事なんだよ……例え私が今の言葉を分かっていても確信ではない。だから、ちゃんと言ってくれないと伝わってないこともあるんだからね」
……あ、そういうことか。確かに今俺はちゃんと言葉にして言わなかったのが悪いのかもしれない。確かに、そういうことを口にして言うのは恥ずかしいけど、ちゃんと言わないと伝わらないことだってあるんだからって、今、聖修に教えられたような気がする。
「ゴメン……」
だから、そこは素直に聖修に謝る。
「別に気にしなくていいんだけどさ……今度から気を付けてくれればね」
「うん!」
聖修の笑顔に俺も笑顔で返す。
そこで俺が何か言ったら喧嘩になるかもしれないと思ったからだ。せっかく恋人同士になれたのに初っ端から喧嘩するってことはあり得ないだろ。それなら折れる所は折れた方がいいと思ったからだ。最も今のは俺が悪いのだから謝る所だったのだけど。
「聖修……」
俺はもう一度、確かめるように聖修の名前を呼ぶ。
「なーに……?」
「ん? 聖修の名前をただ呼んでみたかっただけ……」
なんて本当に少女漫画の主人公になったつもりで言ってしまっていた。
それに何故か聖修はクスリとしてくれていた。
「ま、いいか……」
そんな風に言う聖修もまた何だか嬉しそうに思えるのは気のせいであろうか。