コロセッオの改修工事が順調に進む中、現場では予想外のトラブルが発生し始めた。大規模な改修プロジェクトにおいて、計画通りに進むことなど稀なことである。エミーはこの危機を乗り越え、改修工事を成功させるために、知恵と決断力を試されることになった。
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1. 観客席の崩落
最初の問題は、観客席の拡張工事中に発生した。石材を運び込んでいる最中、既存の席の一部が崩れ落ちたのだ。幸い、作業中の職人たちに怪我はなかったが、その光景は現場全体に緊張を走らせた。
「これはどういうことだ!?」
崩落現場を見た職人の一人が声を荒げた。石材の接合部分に問題があったことが判明し、設計図の見直しが必要だと判断された。
エミーはすぐに現場へ駆けつけ、職人たちを落ち着かせた。
「皆さん、落ち着いてください。この問題を解決する方法をすぐに考えます。」
設計を担当した職人と話し合いを重ねた結果、基礎部分の補強が不十分だったことが原因とわかった。エミーはその場で対応策を指示し、崩落部分を修復するための追加工事を即座に手配した。
「問題が発生するのは想定内です。それをどう乗り越えるかが重要です。」
エミーの冷静な指揮により、現場の士気は落ち込むことなく保たれた。
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2. 雨漏りの発生
次に起きた問題は、天井部分からの雨漏りだった。照明設備の設置を進めている最中、大雨に見舞われた結果、一部の箇所で水が漏れ始めた。雨水が配線に接触すれば、機材に深刻な被害を及ぼす可能性があった。
現場監督から報告を受けたエミーは、直ちに作業を中断させた。
「配線部分をすべてチェックしてください。安全が確認されるまで作業は再開しません。」
雨漏りの原因を探った結果、古い屋根材が劣化していたことが判明した。エミーは職人たちと協議し、屋根材を全面的に交換することを決定した。費用と時間は増えるが、安全を最優先とする判断だった。
「この修繕は予定外ですが、ライブ当日に問題が起きるよりはるかに良いことです。」
エミーの毅然とした態度に、職人たちはすぐに作業を再開し、雨漏りの問題を短期間で解決することができた。
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3. 資材の不足
さらに、工事が進む中で資材が不足するという予想外の事態が発生した。特に観客席の追加工事に使用する石材が、予定よりも早く底を突きかけていた。
エミーはすぐに領内外の商人たちに連絡を取り、急遽追加の石材を手配した。しかし、石材の運搬には通常よりも時間がかかることが予想された。エミーはこの遅延を最小限に抑えるため、騎士団と職人たちに次の指示を出した。
「石材が届くまでの間、他の部分の作業を優先してください。時間を無駄にせず進めましょう。」
彼女の迅速な判断により、工事全体のスケジュールはほとんど影響を受けることなく進行した。
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4. チームの団結
これらのトラブルを乗り越える中で、エミーの指導力は現場全体を一つにまとめ上げていった。騎士団、職人たち、そして文官たちは、それぞれの役割を全うしながら互いに助け合い、工事を進めていった。
蒼鷹騎士団の団長レオンは、資材の運搬を自ら指揮し、団員たちを励ましていた。
「おい、みんな!ここが正念場だぞ。お嬢様が信じてくれているんだ。俺たちも全力で応えよう!」
一方、ルージュロゼリアのリーダー、リリアンも現場で職人たちのサポートをしながら、こう声を掛けていた。
「大変な状況だけど、みんなで力を合わせればきっと乗り越えられるわ。」
こうした声がけが現場の士気を高め、工事を再び順調な軌道へと戻していった。
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5. トラブル解決の果てに
数週間にわたる苦労の末、問題の多かった観客席の修復や屋根の補修が完了し、音響設備も無事に設置された。トラブルを乗り越えたことで、チーム全体の団結力は一層強まっていた。
エミーは完成に近づいたコロセッオを見上げながら、小さく息をついた。
「たくさんの困難があったけど、みんなのおかげでここまで来ることができたわ。」
職人のリーダーが彼女の隣に立ち、笑顔で答えた。
「お嬢様、私たちもこの仕事を誇りに思っています。これが完成すれば、領民たちにとって忘れられない場所になるでしょう。」
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未来への希望
トラブルを乗り越えて完成が間近となったコロセッオは、エミーにとって領地発展の象徴そのものだった。この場所が新しい時代の幕開けを告げる舞台となる――彼女はその未来を確信しながら、次のステージに向けて準備を進めていった。