第九話「気候変動異常気象憂慮詐欺」
ここまでずっと負けなし、この街じゃ俺が最強みたいな話をしてきたが為すすべもなく完全敗北した物語ももちろんある。数多の勝ちのひとつを忘れてもあの時の失敗は、敗北だけは忘れたことがない。
ひとりの高校生が特殊詐欺の被害に遭った。高齢者が狙われることが多いとワイドショーのいいネタに、エサになっているこの犯罪だが、若者が被害に遭うことはニュースではあまり聞かない気がする。俺はよく目の当たりにしているけどね。
いつの時代だって弱い者を食い物にする人間はいる。いつの時代でもこれを許すことはできない。被害者の高校生は純心で、環境問題を日々考えて憂いていた。学校の授業だけでは飽き足らず、環境保全活動なんとか団体に参加して募金活動をするほど熱心。だけど、そんな一生懸命になっているときほど自分が見えずに、周りが見えなくなっていることなんてのはよくある話。結果、彼は詐欺師に騙されて借金地獄になった。
これは事件も相手も自分も勘違いした俺が完全敗北したときの物語。あらかじめ言っておくけど結末はどう見てもバッドエンドだから、読みたくない人は飛ばしてくれ。無様にやられる姿を見たい物好きは最後まで楽しんでくれよ。
惨敗、完敗、完全敗北。最凶の詐欺師が微笑む第九話。