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爆散雪像配信05

 配信開始。


「みなさん見てますか! この惨状を! さっき見てもらったのは栃木県の修学旅行生の中学生がやったらしいけど、これは私がやりました。へへへ。ホント、良いことしたよねその中学生。いやー、先に私がやれば良かったな。二番煎じじゃないの。……って、なんだよ。おい、やめろてめぇ。何してんだお前ら、おい!」



 逮捕。取り調べ。しかし即釈放。理由は明かされていない。



 配信開始。



「いやー、参りましたよ。逮捕されちゃって。まさかですよね。やりすぎだよな! そう思うよな、お前らも。そう、そう。ありがとうよ。あとさ、この街の若者を束ねている人間? リーダー? みたいなのに仲間連れてかれちゃって。それも酷い目に遭ったんですよ。そんなさ、雪像って言っても地元市民の雪だるまじゃん。祭りが終わったら全部壊されるんだから、そんなに目くじら立てるなっての。本当、この街の人間は最低最悪ですよ。こんなところ観光に来る意味ないしょ。そんな人間が作った食べ物とか何入ってるか分からないし、都心のスーパーにも野菜やら肉やらが山のように運ばれて並んでるだろ? テロ行為だよ。ここの人間は最低最悪で、そんな人種に好き勝手されてはたまらないよな? そうそう。もっとコメントくれよ。スパチャいっぱいありがとな。お前らのためにこれからも頑張るから」



 自己中配信は何度も何度も、繰り返し行われた。ボーイズを常に派遣して行き過ぎた行為がないかを監視したが、喋っているだけなら見逃した。何を言おうと、どんな考えがあろうとそこまで否定する権利は俺たちにない。風評被害を助長する発言が問題視されるなら、それこそ警察や自治体が対処する問題で、俺たち若者メンバーが手を出すことではない。あくまでこの街、この街の人間に手を出す人間を俺たちは処理しているに過ぎない。何でもかんでも取ってつけた世の中と同じ正義を安易に振りかざすことはしない。そんな質の悪いことをするために生きていない。ボーイズもガールズもそれぞれ生活が、仕事がある。成哉の発言と振る舞いに同調し、彼の指示、直命を守って従うためにこのグループに加入している。いつでも抜けていいし、いつでも入って良い。再加入脱退も自由。



 創成川リバーサイドは集まりであって、集団でもチームでも軍団でもない。目的を共有する若者が点在しているだけ。同じ主教を信仰する人達が各地に居るだけ。その仲間達との行動が、俺の行動が多少認められて頼られたり頼っているのが、俺の物語の俺サイドで見えているだけ。外部からはきっと不良に近い若者たちだと、そういう視線をひしひしと感じている。それに対してそういう見方もあるんだな、と俺たちは思っている。街の外側を認めず、共感せず、無視もせず。勝手に意見を言えばいい。俺達もこの街と成哉を含めた人間のために尽くすだけだから。



 配信には配信を。相手がそこで戦っているなら、相手と戦いたいなら相手の世界に挑戦し、戦場にするまで。その手に詳しいガールズとボーイズが何人かいることを、雪まつり中に行われた集会で知って集めた。


「創さん、今度は何をするんです? 辛抱ならないですよ。あいつら好き勝手言いやがって。悪口の対象が滅茶苦茶広がってる。手続きが終わらないと粛清が入らない。俺たちが何とかしないと!」


「まあ、そう焦るな。そのためにお前たちを集めたんだ。戦うなら相手の土俵に一度乗り、降りてきたところを引きずればいい。いつもの通りに。だから今回は、ふたつの部隊を作る。配信メンバーと決戦粛清メンバー。最終決戦は祭りの最終日の夜に決行する。奴らが都心に帰る日だ。相手のスケジュールは既に抑えてある。俺でも簡単に手に入った。楽勝。ではまず、配信の作戦を提案する。これは俺の浅い知識で作ったから、具体的な事はお前たちに聞いて決めたい。祭りの期間は残り三日。いいか。視聴者を獲得してそいつらを対象に配信するんじゃないからな。敵は迷惑配信者、フレイムウイングマンだ。コナミに怒られればいいんだ、そんな名前」



 俺達を最低最悪の人間だと言った最低最悪の配信人間を最低最悪の作戦で潰す。ここまでの全てを後悔させてやる。その負け姿を、こんなことされんですと誰にも言えないように。引退だよ。相手が悪かった。







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