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札幌ブラック07+1

 その夜。白のスーツを勝負服に選んでいる男が黒いラーメンを食べていた。この時はスーツではなく、質素な服装で黒いラーメンを食べていた。この街一番のIT企業の社長で、会長で、ガキ共のトップだが、そのラーメンを食べる時はいつも安い黒のパーカーと青のジーンズ。中学の友人、矢神という男のラーメン。ボーイズではない。無関係な一般人。創にはボーイズの店が襲われたと言ったが、あれは嘘。本当の友人だからこそ、意趣返しの本当の理由を正直に、素直に言えなかった。言わなくても分かってくれると信じていたから。


 決着をつけた夜も、奴らの真意に気づいた夜も、何も無い平日も毎日。変わらずにそのラーメンを食べる。ルーティンに近い。深夜の夜食として、毎日。


 ひとり、ひっそり、ひいらぎ。冬に咲く白い花、柊の油絵が飾られているその席で。


 友人にビッグボスと呼ばれるこの男はこの時何を思っているのか。片隅で熱々の湯気に息を吐き、真っ暗な焦がし濃口醤油を、札幌ブラックを、人知れずにすすった。




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